岩渕健輔、ラグビーW杯と東京五輪のためにBACK NUMBER
今回、W杯後も日本は弱くならない!
サンウルブズが埋めたラグビーの空白。
text by
岩渕健輔Kensuke Iwabuchi
photograph byAFLO
posted2016/03/18 10:30
山田のトライなどで、チーターズ戦は1点差の大接戦。世界は、手が届かない距離にあるわけではないのだ。
最大のメリットは、トップリーグのレベルアップ。
スーパーラグビーで繰り広げられているのは、世界最高レベルの公式なリーグ戦です。野球であれサッカーであれ、かつてこのような大会が実現したケースは、日本のスポーツ界では存在しませんでした。
試合の演出方法やファンの開拓などの点において新たなノウハウが蓄積できますし、チーム作りのアプローチに関しても、新機軸をもたらします。
たとえば企業を母体とするのではなく、あくまでも一つのクラブチームが活動するという枠組み自体、かつての日本ラグビー界にはなかったコンセプトですし、将来的にはスーパーラグビーに参戦するフランチャイズチームを2つ、3つと増やしていく道も拓けていくでしょう。
これが実現すれば、日本各地に新たなラグビーの拠点が設けられ、ラグビーを軸にした地域活性化も可能になるかもしれません。またクラブの下部組織としてユースチームなどができれば、草の根におけるラグビー人口の拡大にも寄与していくはずです。
何より、このように日本ラグビー界全体が刺激を受けていけば、トップリーグそのものが活性化します。語弊を恐れず言うなら、トップリーグの活性化とレベルアップこそが、スーパーラグビーへの参戦で得られる一番大きなメリットかもしれません。トップリーグの充実なくして、日本ラグビー界の総合的な発展はあり得ないからです。
数年間1度も勝てない、という可能性も!?
とはいえ、道程は平坦ではないでしょう。理由は明白、スーパーラグビーとは、名実共に世界最高峰の戦いだからです。
たとえばアルゼンチンがラグビー・チャンピオンシップ(ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカの各国代表によって競われる大会)に参戦した際は、初勝利を挙げるまで3年かかりましたし、イタリアがヨーロッパのシックスネーションズに加盟した際にも、フランスのような強豪国に勝てるようになるまでには、10年近くの歳月が必要でした。
同じことは、サンウルブズにも当てはまると考えられます。W杯イングランド大会で日本代表が3勝を挙げたことによって、ファンの皆さんの期待はかつてないほど高まりました。しかし歴史を振り返れば分かるように、まだ日本はラグビー強国になったわけではありません。むしろ日本ラグビーの歴史においては、イングランド大会での躍進の方が、例外的な出来事だったのです。
もちろんコーチングスタッフや選手、チーム関係者は必死の努力を続けていますが、結果を出すためには、総合的な環境整備も不可欠になります。かつてのアルゼンチンやイタリアがそうであったように、長年に及ぶ地道な努力の積み重ねを経て初めて、サンウルブスはスーパーラグビーでタイトルを狙える強豪チームに成長していくのです。