相撲春秋BACK NUMBER
元魁皇・浅香山親方に聞く。
琴奨菊の初優勝と、これから。
text by
佐藤祥子Shoko Sato
photograph byJMPA
posted2016/03/08 12:00
初場所千秋楽、琴奨菊(左)と豪栄道(右)の一番。琴奨菊の躍進から周りも発奮すべしと浅香山親方は言う。
最悪の場所になった豪栄道がすべきこと。
振り返ると、初場所は琴奨菊にとっては最高の場所だったと思うけど、豪栄道は4勝11敗という成績で、同じ大関として最悪の場所だったでしょう。でも、かつての俺がそうだったように、その悔しさを忘れてはいけないと思う。こういうきっかけは、なかなかないですよ。大関に昇進する前に上がってきた豪栄道は、強かった。当時は馬力があったのに、今では消極的になっていて、苦しまぎれの首投げや、はたきとかが多いですよね。
日々稽古をしていて、本場所で相手と戦って、自分の弱いところや直すべき点は、わかっているはずなんです。もし馬力が落ちているんだったら、それを克服するように何かを自分で考えて、やらなければいけない。「あの時、大関に昇進する頃に何をやっていたか」と、今、思い返してみてもいいんじゃないかな。大関ともなると、調整法とか、稽古のやり方が変わってもくるものなんです。でも、今までの稽古で成績が上がらない、結果が出ないならば、やっぱり何かを変えなきゃダメなんですよ。そこは、俺が知らないだけで、すでに努力はしてるのかもしれないですけどね。
今の状態を維持する難しさ。
稀勢の里もそうです。安定した成績は残せるのに今一歩のところまで来て、今ひとつ何かが足りずに、優勝に手が届かない。原因がどこかにあるはずなんです。今までやってきたことに何かをプラスしてもいいと思うし、逆に何かを省いて、見直して変えてもいい。琴奨菊がそうすることによって変わったんだから、彼の姿を見て、そこに周りの力士たちも気づいてほしいんですよ。
琴奨菊は、かつての朝青龍や白鵬みたいに、ここまで勢いで来たわけじゃない。大関昇進から4年が経って、ここのところ急に強くなって、やっと優勝できた。今の状態をずっと続けられたら、これは本当にすごいことだと思います。今は本場所のあいだの巡業日数もすごく増えてるし、治療でもトレーニングでも、なんでも続けることが時間的にも物理的にも難しくなる。体調やモチベーションを維持することが、結構難しくなるんですよ。
今回の琴奨菊もそうだけど、優勝するといろいろな行事も増えて、今までにない多忙なスケジュールをこなしていかなければいけなくなる。そのなかで、どう体調管理をしていくか。