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元魁皇・浅香山親方に聞く。
琴奨菊の初優勝と、これから。 

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佐藤祥子

佐藤祥子Shoko Sato

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photograph byJMPA

posted2016/03/08 12:00

元魁皇・浅香山親方に聞く。琴奨菊の初優勝と、これから。<Number Web> photograph by JMPA

初場所千秋楽、琴奨菊(左)と豪栄道(右)の一番。琴奨菊の躍進から周りも発奮すべしと浅香山親方は言う。

力士生命に関わるけがを克服。

 前に、大胸筋をやっちゃったでしょ?(※大関昇進2年後の11月場所。右大胸筋断裂で、全治3か月という力士生命に関わる大けがを負う)これは、やっぱり脇が締まらなくなるらしいし、力を入れると痛むというのもある。そんなケガもあったなかで、よく優勝できたな、と思えますよ。ケガをしてもしっかりリハビリをやって体を鍛えていけば、なんとかなると琴奨菊本人もわかったと思う。周りの関取衆にも、見せつけることができたんじゃないかと思うんです。

 最近は、ケガしたらすぐに諦めてしまうというか、「とりあえず休めばいいか」「休めば治る」というくらいの感覚なのかな。体を鍛え直して出直すというような意識が薄いような気がするんです。その点、琴奨菊は新しいトレーニングを7月頃から始めたと聞くけど、きっとそれだけではなく、稽古もいろいろ自分で考えながらやってきたんでしょう。今回、その結果が出たんですね。

屈辱的な負けをきっかけに鍛え直した魁皇の経験。

 俺は'00年初場所の千秋楽で、武双山(※現藤島親方、互いに次期大関候補と言われていた当時のライバル)に、土俵下まで転げ落ちて負けるような、恥ずかしい相撲で負け越しが決まってね。この時の武双山は初優勝。俺は周りにもボロクソに言われて、悔しくて悔しくて、琴奨菊じゃないけど、生活から何から全部変えました。持病の腰が本当に悪くて徹底的に治療し、やっぱりケガを抱えていると体のバランスも崩れてくるから、本来は好きじゃなかったトレーニングも始めたんです。

 自分が弱かったところを鍛えて、自転車を漕いだり、プールにも入ったり。俺はそれで体のバランスもよくなったんです。琴奨菊のやっている「体幹トレーニング」じゃないけれどね。きっと今回の彼も同じような感じだったのかな。

 俺の場合、体を鍛え直してから、まわしを付けて徹底的に相撲の基礎をやった。四股、すり足、てっぽう、ぶつかり稽古――。ここで、新たに鍛えた筋肉を、実践の相撲でまた使えるようにするんです。たぶん相撲の基礎だけをひたすらやっていても、変わらなかった。もう自分の体も自分の相撲の型も出来上がってしまっているからです。でも、そこで土台である体を鍛え直し、そしてまた基礎に戻る。今までの形にパワー、地力がさらに加わって、相手に対する圧力も強くなり、足も出るようになったんです。引かれても、そこでついていけるようになった。その結果が出て、5月場所には初優勝でき、7月場所後には武双山に遅れながらも、大関に昇進したんです。

【次ページ】 最悪の場所になった豪栄道がすべきこと。

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