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サッカーの世界地図を変えたい米国。
注目のFIFA会長選挙とFBIの動き。
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byFIFA via Getty Images
posted2016/02/26 17:00
空位となっているFIFA会長の席。現在は、アフリカサッカー連盟の会長でFIFA副会長でもあるイッサ・ハヤトゥが代理を務めている。
FBIは4年もの歳月をかけてFIFAを追い込んでいった。
すべてのはじまりは、ブラッターが言うように2010年12月におこなわれたFIFA理事会での、2022年ワールドカップ開催国決定投票であった。
この投票で世界一の大国であるアメリカが、中東の小国カタールに敗れたこと、しかもカタールの勝利が不正絡みであり、その不正に関わった人物たちがアメリカの法律を破っている可能性が高いことが、彼らの正義感に火をつけたのだった。
チャック・ブレイザー(当時CONCACAF事務局長でFIFA理事)が、FBIとの司法取引によりアンダーカバー――いわゆる“モグラ”としてFIFA理事会の内部事情を伝えるようになったのは2011年のことだった。以来、FBIは、4年の歳月をかけて昨年5月の大量検挙までに万全の準備を整えたのだった。
VW、トヨタ……今度はFIFAがアメリカの標的に。
ある司法関係者はこう述べている。
「ダイムラーやフォルクスワーゲン、トヨタの例を見れば明らかなように、アメリカは自国の法律が愚弄されたとわかった時、とてもアグレッシブになる。小さな綻びから突破口を開き、莫大な罰金を企業に科す。それと同じことがFIFAに対しても起こったわけだ」
ただ、それは、単なる大国のプライドの問題だけではない。ワールドカップを2022年に開催しなければならない事情がアメリカにはあった。
MLS(メジャーリーグサッカー)のヨーロッパ地区代表を務めるジェローム・メアリーは、その理由をこう語っている。
「MLSの目標は、2022年ごろまでに世界の3大リーグ、あるいは4大リーグのひとつになることだ。ワールドカップの開催は、そのためにどうしても必要だった。というのも今のアメリカに欠けているのが、自国の代表選手に対する民衆の関心であり、若い世代の自国スターへの興味であるからだ。彼らの関心を高めるのに、ワールドカップ以上のイベントはない。ワールドカップがすべてを変え得るんだ」
そうであるからこそ、カタール開催を支持し続けるプラティニが、次期FIFA会長に就任するのは、彼らにはあってはならないことだった。
「アメリカ人が何かを成し遂げようとするとき、すべてを徹底して突き詰める。それが当然のプロセスでありアメリカのメンタリティだ」とメアリーは言う。
では、徹底して突き詰めた先には何があるのか――。