マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
姿はあの頃のまま、捕球音は銃声。
武田翔太が教えてくれた「点検箇所」。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byNanae Suzuki
posted2016/02/22 10:30
大谷翔平、涌井秀章につぐ13勝をあげた2015年は飛躍の年だった。課題の四球は減るだろうか。
武田の3つのチェックポイントは方向性、視線、リズム。
自分の感覚で捉える3つのチェックポイントとは、方向性、視線、そしてリズムだという。
方向性とは、下半身が踏み込んでいく姿勢と方向。いわゆる、ヒップファースト。体の右側の側線を保ったまま踏み込んで、体の開きをぎりぎりまで辛抱する。
視線は何通りか使い分ける。
真上から見下ろすような角度、顔を三塁側に向けたまま横目を使うような角度、そして、そのタテ・横2通りの角度を合成させた斜めの角度。それを投げようとする球種、コースによって使い分ける。
さらに、リズム。
テークバックで軸足にどれだけ“タメ”を作れるか。1、2、3の単調なリズムじゃない。1、2~の3のリズム。
タメによって投げるボールにパワーを作り、一方で<2~の>とタメている時間で打者の息を上げさせタイミングを崩す。
「楽になったぶん、バッターに集中できるし、今までは自分にばっかり気が行ってたのを」
と、ここまで話してくれたところで、「武田、ブルペン!」と呼ばれて行ってしまったのも、春のキャンプならではなのである。
軽い左足、美しい体重移動。
ソフトバンクのキャンプ地に設けられたブルペンは、7人ほどが並んで投げられる屋根付きのものである。武田翔太はその中央のマウンドを選んだ。
同時にピッチングを行なうグループには攝津正もいて、すぐ近くで準備をしていた。
3年先輩の「5年連続2ケタ勝利投手」にひと声かけるのかなと思ったが、気がつかないような顔で、さっさと中央のマウンドに上った武田翔太。
大きく振りかぶる。左足の上がりがスッと軽い。
そこから足の裏が着地点を探すような“すり足”の踏み込み。前方に体を体重移動させていく姿が美しい。
一塁側のウェーティング・サークルあたりの角度から見ていて、背番号30が最後まで見えている。
だから、一気に体の左右を切り替える回転にスピードがあり、それがそのまま腕の振りの猛烈なスピードになっている。