マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
姿はあの頃のまま、捕球音は銃声。
武田翔太が教えてくれた「点検箇所」。
posted2016/02/22 10:30
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Nanae Suzuki
宮崎の冬の快晴は、空の青がひときわ深い。
2月なかば、プロ野球のほうでは「春季キャンプ」と銘打ってはいるが、季節の正体はいまだ“冬”のまっただ中であろう。
今日は気温9度。それでいて風は終日10mを超える山からのからっ風。
体に感じる冷たさは氷点下のはずだ。
なのに、福岡ソフトバンクホークスのキャンプ地・生目の杜(いきめのもり)運動公園の「祭」のにぎわいは一体なんだ。
メイン球場の「アイビースタジアム」は両翼100m、センター122mの広大なスケール。その大きな球場がすっぽり2つ入ってしまうほどの駐車場が、練習開始の30分前にはいっぱいになってしまう。
車のナンバーを見ていると、九州のレンタカーも多いが、山口、広島、兵庫あたりは珍しくなくて、中に秋田とか帯広ナンバーなんかが混じっていると、ビックリしながらも、「オレも来るだろうなぁ」と妙に納得してしまっている自分がいたりする。
メイン球場にサブ球場、それにトレーニングに使うグラウンドが2つ、そして大きな室内練習場。まわって見るにはかなり骨の折れる広さだが、それぞれの施設にこれだけ多くのファンが群がっていると、むしろ“窮屈”を感じるほどだ。
本日訪れたファンの数14000。プレスルームのボードにはそう記されていた。
やっぱりプロ野球は強くなくっちゃな……。
ソフトバンクには「流し」卒業生が何人もいる。
キャンプが祭りになっている。まるで、ペナントレース制覇の「前夜祭」だ。怖いぐらいの盛り上がりの渦を、詰めかけたファンの一人ひとりがすでにもう捲きおこしている。
ソフトバンクには「流しのブルペンキャッチャー」の卒業生が何人も在籍している。
大御所・寺原隼人は『野球小僧』で「流しのブルペンキャッチャー」が始まった1年目。3人目の“相手”だったから、もう15年前になるのか。
東浜巨は沖縄尚学高の時、巽真悟は近大4年で、笠原大芽(福岡工大城東高)に吉本祥二(足立学園)は高校3年のまだ誰も知らないころ。そして、去年のドラフト1位高橋純平(県岐阜商)……。