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太田宏介がハリルに課された宿題。
オランダで真の「デュエル」を学べ。
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph byAFLO
posted2016/02/06 10:40
数千万円に及ぶ移籍金を太田に提示したフィテッセ。その評価にたがわぬ順調な滑り出しを見せている。
練習中に響く「バチン!」というキック音。
オランダは、言わずと知れた攻撃サッカーの国。ボールポゼッションを重視し、両サイドから積極的に攻め込んでいくスタイルはリーグ全体にも浸透している。
フィテッセも例に漏れず、アグレッシブなサッカーを展開する。ただパスを回していくというだけに留まらず、当然屈強な男同士の対決だけに、球際の激しさも伴う。スペインや南米のような流麗なパスサッカーではなく、技術と肉体が融合したボールゲームだ。
ある日の練習のことだった。2チームに分かれてポゼッションゲームを行う際、太田はフリーマンとして一人中央に立った。コーチのホイッスルでスタートすると、選手たちが『バチン! バチン!』と強いキック音を鳴らしながらボールを回していく。守備側の人間は、練習でもお構いなしにガツガツとぶつかっていく。その中で太田も勢いに負けじと、どんどんボールに触れた。その度に、何人もの選手が一斉に「OTA! OTA!!」とボールを要求していた。
「Jのフィジカルコンタクトは、本当に軽いものだった」
「みんなめちゃくちゃ自己主張しあうじゃないですか。パス回しでも本気で言い合いますからね。自分がボールを持っても、日本なら一人か二人の選手がパスを呼び込むけど、こっちは何箇所からも言われる。そこは年齢も何も関係なしの、アピール合戦。アピールしてナンボの世界。もう、遠慮なんて言っていられないです。
日本代表に行くと、海外でプレーしている選手はみんな球際の大事さを言っていた。こっちに来て真っ先に感じたのは、本当にその通りだなということ。練習で、すでにこれですから。正直、Jリーグで戦っていた時のフィジカルコンタクトは、本当に軽いものだったんだと思う。日本でも『球際行けよ!』と味方同士で言い合うけど、見ていてもこっちとの差は明らかです」
現代サッカーにおいて、激しさを伴わないプレーは洋の東西を問わずあり得ないだろう。「現代サッカーとは、デュエル(フランス語で激しさや戦いという意味)である」。これは日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督の口癖だが、その激しさの強弱において、外国人よりも平均的に体格の劣る日本人は弱い傾向があることは否めない。