サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
北朝鮮を下し五輪へまずは1勝。
今年のU-23、実はかなり勝負強い?
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byTakuya Sugiyama
posted2016/01/14 11:15
インフルエンザから復帰した遠藤航の存在はやはり大きかった。ここからコンディションを上げていくのが楽しみだ。
割り切りとスカウティングがもたらした冷静。
1-0のまま進行していく過程で、守備陣は交代カードを積極的に切る北朝鮮の圧力を受けていった。リスタートをきっかけとしたゴール前のスクランブル状態に、何度見舞われただろう。日本のペナルティエリア内で、空中戦の競り合いが何度繰り広げられただろう。一度は跳ね返したセカンドボールを回収できず、もう一度サイドへ展開されて再びクロスを浴びる場面もあった。もし追いつかれたら、そのままの勢いで試合を引っ繰り返されてもおかしくなかった。
だが、日本は冷静だった。
「とくに後半の残り20分とか15分以降は、1-0でしっかり勝つということも頭に入れながらプレーはしていました。もちろん2点目を取れれば理想的な展開ですけれど、それができないときはしっかり守る、というところはチームとして意思統一ができていた」
ダブルボランチの一角を担った遠藤航が語ったのは、指揮官がチームに落とし込んできた「割り切り」そのものである。同時に、植田とのコンビで制空権を掌握したセンターバックの岩波拓也は、積み重ねてきた練習とスカウティングに焦点を当てた。
「日本がリードしたら、後半は高い選手を入れて長いボールを入れてくるというのは、数日前からスタッフに伝えられていました。石垣島の合宿でもその対応はやってきたので、自信を持って跳ね返すことができた。相手のロングボールが多くなってもイライラせずに、逆にそれが普通だと思って対応できた」
ピークはまだ先、上積みは多いにある。
組織としての連動性や個々が持つ敏捷性を発揮するサッカーは、ほとんど表現できなかった。「チーム全体で攻撃に出ていくサッカーを、もう一回甦らせないといけない。攻から守のところでリンクできなかった」と、手倉森監督も話している。もっとも、指揮官の表情には陰りも曇りもない。
コンディションのピークはまだ先であり、初戦からフルスロットルで走り抜けるプランは描いていないからだ。練り上げてきたリスタートから決勝点を奪いつつも、CKやFKのオプションはなおも残されている。浅野拓磨を温存した交代のカードも、これからの戦いを見越したものだった。
現地ドーハ入り後にインフルエンザに見舞われたキャプテンの遠藤が、体調の不安をまったく感じさせなかったのもプラス材料にあげられる。修正すべき課題は多くとも、試合を重ねることでひとつひとつ潰していける。