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2016年は「攻撃的2番打者」元年に?
梶谷隆幸は第2の成功例になれるか。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNanae Suzuki
posted2016/01/08 10:50
2015年、主に3番を務めた梶谷は打率.275、13本塁打、66打点、28盗塁の記録を残した。2016年はラミレス新監督の期待に応えられるか。
併殺を避ける、という優先事項。
とにかく一瞬にしてチャンスが潰れる併殺を避けることが、無死一塁での作戦の大きな目的になる。エンドランは空振りなどのリスクがあるので、だからベンチは最も確実に走者を送れるバントを選択しがちになる。そこに、二塁に送ることでワンヒットで得点に結びつくというプレッシャーをバッテリーにかけられるという理由もつく。確かに送りバントは、相手に1つのアウトを与えるので一気呵成の大量点の可能性は減るかもしれない。ただ、まず1点と考える日本の野球では、併殺を避けるという消極的理由で送りバントの選択が多くなるのは仕方ないことだった。
ただ、左の俊足打者を2番に起用することで、併殺のリスクを軽減することができる。采配の幅は大きく広がっていくわけである。もし、安打が出ないで走者が入れ替わっても、足があれば今度は2番打者に盗塁させて1死二塁と送りバントと同じ場面を作るという選択肢もある。
そう考えると、何から何まで攻撃的2番打者はいいことずくめに思えるのに、なぜ他のチームがその選択をできないのか。理由は打線の構成から3、4番に左の好打者を起用しなければならないために、なかなかこうした適性を満たせる2番の人材がいないということなのだろう。
ヤクルト川端、DeNA梶谷という成功例。
昨シーズンのヤクルト・川端は最初は、3番を打っていたが、山田哲人内野手のブレークで2番という場所を得た。普通ならば1番に起用しているところを2番に使ったところがポイントで、3番の山田、4番の畠山和洋内野手と連結したことで、新しい2番像が脚光を浴びることになった。
梶谷も昨シーズンは、3番が最初に与えられた打順だった。しかし今季は2番に梶谷が入ることで3番にホセ・ロペス内野手がいて、4番の筒香と連結する。今までは3、4、5番と好打者をつなげる発想だったが、攻撃的2番打者の起用はそれが前倒しになって初回の集中攻撃のチャンスがより広がるわけだ。