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2016年は「攻撃的2番打者」元年に?
梶谷隆幸は第2の成功例になれるか。
posted2016/01/08 10:50
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Nanae Suzuki
2016年は、日本の野球に新しいトレンドが定着する年となるかもしれない。
昨今のメジャーリーグの話題として盛んに語られていることだが、いまMLBでは攻撃的2番打者が一つの大きな潮流となっている。
ロサンゼルス・エンゼルスのマイク・トラウト外野手やトロント・ブルージェイズのジョシュ・ドナルドソン内野手らがその代表例として挙げられる。
こうしたチーム最強打者を2番に置く利点としては、第1に優秀な打者に多く打順を回せることがあり、また1番ではなく2番に置くことで、出塁と得点という2つの役割を担わせることができるという点がある。
単純に確率だけを計算して打順を組んでいくと、1番打者から高打率の選手を並べていくことが、最も得点効率が高いと言われている。ただ、野球は併殺もあり、アウトカウントなどの制約もあるため、ことはそう簡単にはいかないわけだ。
送りバントの少ないメジャーでも、これまでの2番打者像は、出塁した1番打者を得点圏に進めて最強打者を置く3番と長打力のある4番につなげるという考えが重視されてきた。
ただ、2番に最強打者を置くことで一気に走者を返して、なおかつ無死二塁とか三塁という状況を作れる。また、1番が凡退しても2番がチャンスメイクして長打で得点圏に走者を置いて3、4番を迎えるシチュエーションを作れるし、あわよくば一発で1点をもぎ取ることもできる。
それができるのが、トラウトでありドナルドソンだということである。
日本の2番はまだ「つなぎ」の打者が多い。
投手力を軸にした守りの野球が主流の日本では、ゲームの序盤はまず1点を取りにいく戦略が主流で、まだまだ最強打者を2番に置くところまで割り切った打順構成をできるチームは少ない。
セ・リーグを代表する2番打者の広島・菊池涼介内野手は122試合で48個の送りバントを決めている。あのソフトバンクでも、2番で28試合に先発した中村晃外野手が3回だったのを除いて、27試合に先発した明石健志内野手が7回、22試合に先発した今宮健太内野手は13回と、走者一塁では送りバント主体の作戦となっている。こう見ていくと、まだまだ日本では2番打者はクリーンアップへのつなぎというのが主任務となっているわけだ。