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今大会は“高橋壱晟の大会”になる!?
青森山田のスーパー2年生、覚醒。
posted2016/01/07 12:00
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
NIKKAN SPORTS
大会が“高橋壱晟の大会”となろうとしている。
青森山田の背番号7を背負う、2年生MF高橋壱晟。青森山田での中学時代から将来を嘱望されてきた逸材が、ついにブレイクの時を迎えているのだ。
サイズがあり、スピード、ボールコントロールに長け、視野も広い。パサー、フィニッシャーと両方こなすことが出来る高橋壱晟(たかはし・いっせい)。だが、こういう才能に恵まれた選手ほど「何でも出来てしまう」ことで、己の才能の本質に気付かないことが多い。
なかには気付かずに終る選手もいるし、気付いたときにはもう遅い選手もいる。重要なのはティーンエイジャーのうちに気付けるかどうかだ。ここで言う“気付き”とは、「あ、俺って上手いんだ」というたぐいの漠然としたものではない(そんなレベルだと錯覚に過ぎない)。
“気付き”の真の意味とは、“己を知る”ことである。
自分には何が出来て、何が出来ないのか。さらに言うと、自分には何が出来る可能性があって、その可能性はどのくらいなのかを計ることにまで至る。どうやったって無理なものは伸ばすことは出来ない。だからこそ、「今の自分はこれが出来るはずなのに、出来ていない。じゃあ出来るようになるためにはどうすれば良いのか?」という、自分自身への検証、問いかけが必要になってくる。
高橋壱晟はまさにこの大会でそれを問いかけ、その答えを見いだそうとしているのだと思う。
溢れる才能を発揮できない「宝の持ち腐れ」。
では、高橋の問いかけとは何なのか?
それは彼の才能を見いだした黒田剛監督と、名参謀である正木昌宣コーチらが散々彼に言い続けていたことでもある。
「アイツはやればできるのに、やっていない。勝手に自分の限界を決めてしまう。出来るのにやらないのでは、その才能も何の意味もない」(黒田監督)
まさに「宝の持ち腐れ」。高い能力を持っているのだが、重要な一戦となると途端に萎縮してしまいプレーの質が落ちるという問題を、高橋は抱えていた。
そんな高橋を成長させるために、今季序盤に黒田監督はあるメッセージを送っていた。
これまで椎名伸志(現・カターレ富山)、差波優人(明治大学、ベガルタ仙台入団内定)らが背負った7番を、彼に託したのだ。
7番と言えば、柴崎岳(現・鹿島アントラーズ)、神谷優太(高3、湘南ベルマーレ入団内定)らが背負う10番に次ぐ、青森山田の「エースナンバー」。それを2年生に背負わせる――黒田監督の無言の檄だった。