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今大会は“高橋壱晟の大会”になる!?
青森山田のスーパー2年生、覚醒。 

text by

安藤隆人

安藤隆人Takahito Ando

PROFILE

photograph byNIKKAN SPORTS

posted2016/01/07 12:00

今大会は“高橋壱晟の大会”になる!?青森山田のスーパー2年生、覚醒。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

富山第一との準々決勝でゴールを決めた直後の高橋(右)。今大会4得点目となり、得点ランキング2位で得点王も視野に。

一度は覚醒したと思われた高橋だったが……。

 だが全国高校サッカー選手権まで、その檄はちゃんと高橋に届いていなかったようだ。

 春から始まっていた高円宮杯プレミアリーグイーストでこそ、持ち前の能力を発揮し攻撃の要として存在感を見せつけた高橋。だが、8月のインターハイではそれまでの活躍が嘘のように、何も出来なくなっている7番がいた。初戦の久御山戦での高橋は、存在感がゼロに等しかった。

「全然身体が動かなくて……相手に好き放題やられてしまった。はっきり言って、自分のせいで負けました」

 中盤がほとんど機能しないまま、1-2で敗退。自分の不甲斐なさを痛感する試合となった。「ここ(インターハイ)で気付けるか」と筆者も期待をしていたし、実際に彼に「重要な一戦で力を発揮出来ない選手は伸びない」と、厳しい言葉を送っていた。

「自分が変わらないといけない。この試合で真剣にそう思いました」

 この試合で、高橋は自分の弱さにようやく気付く。心の中に、自分の弱さに正面から向き合う姿勢の萌芽が生まれたのだ。そして、この日から自分の弱さと向き合う日々が始まった。

まだまだ続いた、試練の時。

 プレミアイーストの後期(秋)では、積極的な仕掛けがより見られるようになり、“萎縮”という言葉は徐々に消えていくように思われた。だが、プレミアイースト第17節(11月29日)の鹿島ユース戦。勝てば優勝という非常に重要な一戦では、積極的にバイタルエリアに飛び込み試合のリズムを作りこそしたが、ゴールという結果には結び付けらなかった。0-1の敗戦。結果としてリーグ優勝(イースト)を逃した。

「インターハイ以降、徐々に納得がいくプレーが出来るようになってきました。でも、それじゃ全然足りない。周りが僕に期待してくれることが本当に伝わってくるからこそ、それに対してきちんと返せていない自分が歯がゆいんです。選手権で絶対に『自分は変わるんだ』と強く思いました」

 大きな決意の中で迎えた全国高校サッカー選手権。初戦(12月31日)の大社(島根)戦の直前の彼を見ると、いつもより表情が引き締まっていた。明らかに……これまでの重要な一戦の前の表情とは違っていた。

「今日はやれるよね?」と声をかけると「大丈夫です。やります」。そして、その言葉どおり、この試合で自らの成長を見事に証明してみせた。

【次ページ】 チームの危機を救う、自信あふれるプレーを。

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