“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
今大会は“高橋壱晟の大会”になる!?
青森山田のスーパー2年生、覚醒。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/01/07 12:00
富山第一との準々決勝でゴールを決めた直後の高橋(右)。今大会4得点目となり、得点ランキング2位で得点王も視野に。
チームの危機を救う、自信あふれるプレーを。
青森山田のチーム自体は試合の立ち上がりから明らかに緊張で動きが固かった。
昨季も優勝候補と言われながら、中津東(大分)に初戦敗退をくらっている――その苦い記憶のせいなのか、チームは37分までに2失点を喫し、窮地に追い込まれていた。
しかし試合展開とは裏腹に、高橋の動きはキレていた。
バイタルエリアで積極的に仕掛け続け、相手の守備の隙が出来るのを窺った。39分、大社守備陣のわずかな隙を高橋は見逃さなかった。左サイドからのDF原山海里のロングスローからニアで競ったボールがファーに流れると、そこに高橋の姿が。
慌ててブロックに行こうとする大社の選手を尻目に、フリーの神谷に冷静にダイレクトでボールを落とす高橋。これを神谷が強烈ボレーで叩き込み、チームが息を吹き返す1点を呼び込んだ。
後半に入ると、そのプレーはさらに輝きを増す。
56分、バイタルエリア右でルーズボールを拾うと、「前が空いていた。低く抑えることを意識してコースを狙って打った」と、GKのタイミングをワンテンポずらしてから、右足を強振。ボールは真っ直ぐの弾道を描いて、相手GKのニアをぶち抜いた。さらに後半アディショナルタイム2分には、原山の左からのロングスローから、ゴール手前にこぼれたボールに反応して、劇的な逆転弾を叩き込んだ。
「この2点で自信を持って試合に挑めるようになりました」
「神谷さん! 俺が決めます!!」
続く2回戦の聖和学園戦でチームの3点目を正確無比なシュートで決めると、チームは3回戦の桐光学園(神奈川)戦で劇的なPK勝利を収め、ベスト8へと駒を進めた。
そして、ベスト4をかけた準々決勝の富山第一戦。
チャンスを作りながらも決めきれずに苦しむチームを、高橋が圧巻のプレーで救う。
71分、右サイドのセンターライン付近でボールを受けると、左サイドでフリーの神谷の姿が目に入った。少しタメてから、左足で神谷へサイドチェンジを送る。
これまでの高橋なら神谷へパスを送る時、「神谷さん、頼みます!」で終っていただろう。しかしこの時は「神谷さん! 俺が決めます!!」と、自分へのセンタリングの意志をボールに込めたように見えた。