セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
セリエAクラブが3部相手に次々と……。
大荒れのコッパ・イタリアで何が?
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2016/01/05 10:30
2003年の経営破たんで6部からの再出発を余儀なくされたアレッサンドリアの選手(左)。3部のチームがベスト8に入るのは31年ぶり。
優秀ゆえに持ちづらい帰属意識。
「われわれがジェノアやパレルモに勝てたのは、チーム全員に強い“帰属意識”があったからだ」
指揮官グレグッチはジャイアントキリングをそう振り返る。予算も実力も圧倒的に上回る相手に番狂わせを起こすために、“チームとしての一体感や連帯意識”をもって立ち向かった、と彼は説いた。有名選手たちは個として優秀であるがゆえに、高い帰属意識を保ち続けることが難しい。
スペツィアとカルピの両指揮官も、それぞれのアップセットの後で、同じコンセプトを異口同音に並べた。
「うちは全員が一丸となって戦った」(スペツィア監督ディカルロ)
「チーム全体で見せた反骨心こそ、私がチーム全体に期待していたものだ」(カルピ監督カストーリ)
リザーブ組を配し、どこか驕りのあったローマや集中力を欠いたフィオレンティーナに、チームとしてプレーすることへの意識や勝利への執着心は希薄だった。
「今や狙われる立場だ。イタリア8強の1つだからね」
敵地ジェノバで10人になっても諦めなかったアレッサンドリアの勝利は、決して幸運に恵まれたからではなかった。注目度は低くとも、彼らのゲームは本物だった。
3部カテゴリーに属するアレッサンドリアがコッパの1回戦を戦ったのは、真夏の8月2日のことだった。5カ月を戦い抜いて季節が冬へ変わっても、彼らはまだ大会で生き残っている。
厳寒の1月にまだタイトルをかけた大会でプレーできる喜びが、会長の言葉に滲み出る。
「セリエAのクラブを相手に、1度ならたまたま勝てるかもしれない。だがね、2度ってのは偶然じゃない。うちは今や狙われる立場だ。何せイタリア8強の一つだからね」
準々決勝進出を決めた後、選手の一人は「これは夢だよ」と繰り返し、監督グレグッチも「正直に言うと夢にも考えてなかった」と吐露した。だが、ベスト8の栄誉は、もちろん彼らがその手でつかみとった現実だ。