セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
セリエAクラブが3部相手に次々と……。
大荒れのコッパ・イタリアで何が?
posted2016/01/05 10:30
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Getty Images
イタリアの国内カップ戦であるコッパ・イタリアで、番狂わせが連発している。
有力な優勝候補だったローマやフィオレンティーナがベスト16ラウンドで敗れ、代わりに大会8強へ駒を進めたのは、3部リーグのアレッサンドリアや2部のスペツィアといった聞き慣れない名前のクラブだ。例年セリエA上位陣が順当に勝ち上がるコッパだが、無名クラブの下剋上で、今季の大会は俄然面白くなってきた。
12月第3週に行われたベスト16ラウンドの後、現地紙は驚きと愉悦を匂わせながら、今大会を「狂ったトーナメント」と呼び始めた。
セリエAのブービーに沈む昇格組カルピは、2位フィオレンティーナを1-0で破った。年内のセリエAをリーグ最多33得点で終えたフィレンツェ自慢の攻撃陣が、33失点のカルピから今季初めて完封されたのだから、驚きは小さくなかった。
続いたのは2部セリエBの中位クラブ、スペツィアだ。CL16強進出を決めたばかりのローマを無失点で封じ込め、延長の末PK戦に持ち込むと、4-2で破る大金星を挙げた。
シードされていたセリエA上位2クラブは、それぞれのホームで敗れる大失態を演じた。その夜、“スペツィアのアウェー勝ち”の目に張っていたギャンブラーたちは、8.5倍もの高配当に狂喜乱舞した。
2つのカテゴリー差をひっくり返す大金星。
それでも、今大会最大のサプライズは、3部レーガ・プロに属するアレッサンドリアだろう。
15日、ジェノアの本拠地フェラーリスに乗り込んだ彼らは、幸先よく先制はしたものの後半のロスタイムに1-1に追いつかれる苦境を迎えた。追い討ちをかけるように、延長に入ったところでDFマンフリンが筋肉故障によってプレー続行不可となり10人での戦いを強いられた。彼らは3人の交代枠をすでに使い切っていた。
耐えて、耐え忍んで、つった両脚を誰もが引きずりながら神経戦をしのいだ。PK戦まで残るは6分少々、カウンターから劇的な決勝ゴールを決めたのは、ウィキペディアに頁を持たない無名のエースFWボカロンだった。
指揮官グレグッチは試合後に感極まった。
「我々とジェノアとの間にある2つのカテゴリー差を引っくり返しただけでなく、80分間以上もゲームを優勢に進めることができたこと、それ自体がファンタスティックだった。長いサッカー人生で多くの試合を観てきたと思っていたが、今夜みたいな試合にはお目にかかったことがないよ」