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松山英樹&石川遼のキャディ大対談!
「2人は同じ価値観を持っている」
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byYoichi Katsuragawa
posted2016/01/01 10:30
松山英樹のキャディを務める進藤さん(左)と、石川遼のキャディを務める佐藤さん(右)。
佐藤「毎日、練習量の多さに驚かされる」
2015年、松山は結局0勝に終わったが、最新世界ランクは15位のまま世界トップクラスのポジションを確保した。一方で石川はシードをキープするのがやっとだったが、日本ツアーでは出場7試合で2勝。この秋、石川のゴルフには内容に変化があったが、米国であれだけ苦しむ選手が日本では簡単に勝てる…という見方が湧いても不思議ではない。
松山&石川と、その他の日本人選手、とくに同世代の若手プレーヤーとの違いは何だろうか。一介のキャディには答えにくい問いであることに間違いはない。それでも聞きたい。ロープ内外の日本のトッププレーヤーを見てきた彼らの目には、どう映るのか。
佐藤「まずは、ベースの飛距離というのもある。日本に帰ってきて『コイツ、飛ぶなあ』という若い選手をまだあまり見ていない。でも本当のところは……」
進藤「単純に『ゴルフに没頭しているか』、『ゴルフと向き合う姿勢』なのかな」
佐藤「やっぱり努力と、実力やスキルはある程度比例すると思う。彼らといると、毎日驚きの連続ですよ。何がって? まず練習量の多さ!」
進藤「分かるなあ、それ(笑)」
佐藤「やり過ぎかどうかは分からないけれど、あれだけやったら、イヤでも上手くなると思う。ホントに尊敬する」
進藤「向こうの(外国人)キャディに言われるもん。『きょうは何時間打つんだ?』って。『5hours』なんて言うと、いつも笑ってくれる」
佐藤「『あいつ、体大丈夫か』って心配されたり。あと遼の場合は『年間何試合出るんだ?』って聞かれる。『40くらい? 休みが、ねえじゃねえか!』って」
進藤「英樹はその中で、いろんなことを試している。『工夫してまずはやってみる』『違う』、『工夫』『違う』の繰り返し」
佐藤「遼も一緒だね。結構自分ですべてを考えながらやる人、自分の描くものを貫き通すタイプだけど、試行錯誤しながら進んでいく」
進藤「『チームの力』は2人に共通する点」
進藤「あとは手前味噌な感じでイヤなんだけど……2人に共通する点で『チームの力』というのは、あると思うんですよ。一緒に行動する仲間。2年くらい前、(元)ソニー会長の出井伸之さんにお会いしたとき『どんな世界でもより上に目指すために必要なのはチーム力なんだ』とおっしゃっていた。ただの仲良し、ということじゃなくて。チーム力が高まれば、日常の引き出しも増える。誰がどうカバーしあって、技術的な部分以外でもどう向上するかというところ。それも、自分のゴルフに対して、どれだけかけているものがあるかっていう自己投資なんだと思う」
佐藤「本人たちはどう思っているか分からないけれど、チームのスタッフはどこかで心の支えになっていると信じたい。調子が良い時は感じないのに、悪い時に分かるものもある。思い詰めるばかりじゃ良い方向に進まない。一緒に生活しているチームのスタッフが、少し目線を変えたりすることで、前向きにさせてあげたい」
進藤「ジョーダン・スピースはよく『僕の目標』ではなくて、『我々のチームの目標が達成された』と言う。ジェイソン・デイも、タイガー・ウッズだってそう。コーチがいて、トレーナーがいて。世界的に見ても、どのチームもそうだと思う」
佐藤「アメリカにいれば、自然とチームの力はイヤでも高まる。日本人として話せる共通の言語がある限りね。“しゃべれる相手”だから」
進藤「日本でも藤田寛之さん、片山晋呉さん……。強い選手はトレーナーさん、マネージャーさんとも強い信頼関係がある。英樹は『ラインを読む時も、2つの目よりは4つの目の方がいいに決まっている』と言う。それと一緒で、真剣に考える脳だって多い方がいい」