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松山英樹&石川遼のキャディ大対談!
「2人は同じ価値観を持っている」
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byYoichi Katsuragawa
posted2016/01/01 10:30
松山英樹のキャディを務める進藤さん(左)と、石川遼のキャディを務める佐藤さん(右)。
先にPGAツアーに本格参戦したのは進藤さん。
ともに宮里の相棒として始まったプロキャディのキャリアはその後、それぞれが片山晋呉や谷原秀人、女子では佐伯三貴や有村智恵、北田瑠衣といった多くのトッププロのサポートをするに至った。先にPGAツアーへの本格参戦を始めたのは進藤さん。松山がまだアマチュアながら、既にマスターズに2度出場するなど、国内外での評価が高まっていた時期、2012年の秋にオファーを受けた。ちなみに彼と松山は明徳義塾、東北福祉大といずれも中学、高校、大学の先輩後輩の関係である。
進藤「必要としてもらえて素直に嬉しかったしワクワクした。ただ、初めての試合(アジアアマチュア選手権)は3連覇がかかっていたし、すごいプレッシャーがかかった」
佐藤「大ちゃんはスゴイ選手のところに行った、と思ったなあ。僕は、英樹のことは彼が初めてマスターズに行く前に知っていた。2009年のダイヤモンドカップで、次の週に担ぐ予定だった選手のプレーを見に行ったら、英樹が同じ組で回っていて。体のキレ、躊躇しないで振り抜く感じも、すごいポテンシャルを持っている選手だと思った。『誰だ? このアマチュア』と思って名前を見たら『あ、福祉大の後輩なのか』って」
佐藤「遼のガムシャラな感じは今も続いている」
奇妙な縁だが、石川が初めて佐藤さんを試合でキャディに採用したのは、時期や大会こそ違うが、松山&進藤コンビがデビューしたのと、同じゴルフ場である。2013年12月。アジアンツアーのタイランド選手権だった。
佐藤「そうか、一緒なんだ。アマタスプリングCC。僕は遼がまだ日本にいた頃から、マネージャーさんに『機会があったらやらせてください』とお願いしていた。それから何度かスポットで起用してもらって、昨年の春から専属に」
進藤「遼が初めて優勝した時(2007年)は、驚くしかなかったね」
佐藤「うん。『プロがアマチュアを勝たせてしまった』って思った」
進藤「おれ、その試合で谷原秀人さんのバッグを担いでいたんだけど、谷原さんが失格になっちゃったんだ。帰りの新幹線で、携帯電話のスコア速報を見ていたら『谷さん、ヤバいですよ! アマチュアが勝ちそう!』って2人で……。実はその大会の期間中に、練習場ですごくうまいアプローチをしている子を見ててさ。別のキャディさんを呼んで『すごい中学生がいる! クラブの使い方がトッププロみたい!』って。で、終わって気づいたら、勝ったのがその中学生。遼だった(※ちなみに、石川は当時高校1年生である)」
佐藤「当時は傍から『そうずっと上手く続くのかな』と思っていたけれど……続いたね。ガムシャラな感じが、いまもずっと続いている」
進藤「でも普段の遼は、変わったよね。以前はとにかく気を遣って“ヘタを打たない”タイプだった。自分の言葉がどう捉えられるか分からないから自分を見せない。当たり障りのない関係が多かったんじゃないかな。でもアメリカでフラットな遼を知ることができた。あっちでは周りに必要以上の取り巻きも、警備員もいないしね」
佐藤「そうだね。いい意味でリラックスしている。日本だと演じなきゃいけない部分があったりするけど、アメリカではスーパースター・石川遼ではない。PGAのいち選手として扱われる。殻を破れた。日本でも今はその辺の居酒屋さんでもご飯を食べたりするしね」
進藤「周りの人に気付かれない?」
佐藤「たまに気づかれるけど、本人は過敏になっていない。やっぱり人と触れ合うのは、ゴルフでも良い影響があると思う。英樹と一緒にご飯を食べても『今週は芝がどうだった』、『こんな風が吹いていた』なんて、何気ないゴルフ談議自体がすごい情報のはずなんだ」
進藤「英樹もそうだけど、本来は『あまり人に気を遣われたくない』という気持ちがあるんじゃないかな」
佐藤「英樹は一見、気難しい感じもするけれど、実際はすごく気が利く。ただの恥ずかしがり屋さんなのかな。いい人を演じれば演じられるけれど、そういうのが不器用。でも人に見えない優しさがあるよ」