松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
松山英樹が闘いの外で見せる“表情”。
ごくフツーで、少々シャイな若者。
posted2016/01/14 10:50
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph by
Getty Images
松山英樹とは米ツアーの試合会場で毎週のように顔を合わせる。だが、そこは彼の闘いの場だ。「たまには日本で落ち着いて話をしたいなあ」。そんな一方的なリクエストを松山は多忙なスケジュールの合間に組み入れてくれ、彼と私は東京都内のホテルで会った。
「会った」と言っても、松山の周囲にはマネージャー諸氏が付き添い、私の傍にも編集者やカメラマンが同行していた正式なインタビューだ。
その内容をまとめた記事は1月7日発売の「Number」新年号を是非とも読んでいただきたいのだが、ここでは雑誌に書ききれなかった話の一部をご紹介しようと思う。
会話は、ごく個人的なやりとりで始まった。
試合会場ではゴルフウエア。しかし、この日の松山はスーツに身を包んでいた。その姿を「見て見て!」と半ば自慢するような、しかしちょっぴり照れているような、そんな笑顔で彼は私たちを迎えてくれた。
「お母さん、大丈夫?」
「お母さん? うん、元気元気!」
会話の始まりは、周囲にはまるで意味がわからないそんなやり取りになった。松山が私の母を知っているわけではもちろんない。3年前のクリスマスに私の母が急病で緊急手術を受け、病院で年越しになったのだが、私はその出来事を断片的にSNSにアップした。それを見た松山は、新年に米ツアー会場で会った際、「お母さん、大丈夫?」と声をかけてくれた。
あれから700日以上の歳月が流れた間、松山自身が厳しく目まぐるしいアメリカ生活を送ってきたというのに、メディアの一人に過ぎない私の母親のことまで忘れずに気にかけてくれている。そんな優しい一面が、松山にはある。
同行した編集者が「Number」の雑誌を手渡すと、松山は「いつも読んでます」と言いながら、表紙の浅田真央を見て「おっ、真央ちゃん。可愛いもんな~!」。
しかし、「会いたい?」と尋ねると、すぐさま首を横に振り、「会いたくない。ずっとテレビの中の真央ちゃんでいい。会う機会があっても断る」。
ゴルフの世界では突出した存在だというのに、そこから出た別の世界では、ごくフツーで少々シャイな若者の顔になる。そんな松山と話していると、彼が世界トップ15に数えられる一流プレーヤーであることを、ついつい忘れてしまいそうになる。だが、いざゴルフの話題に入ると、流石だなあと感心させられる言葉が次々に彼の口をつく。