スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER

グリフィーと野球の殿堂。
~得票率はどこまで伸びるか~ 

text by

芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

PROFILE

photograph byGetty Images

posted2015/12/05 10:40

グリフィーと野球の殿堂。~得票率はどこまで伸びるか~<Number Web> photograph by Getty Images

今年7月13日、オールスターゲーム前日のホームランダービーの始球式に登場したケン・グリフィー・ジュニア。

マイク・ピアッツァは「持ち越し組」で最有力か。

 新規組で殿堂入りを果たすのは、たぶんグリフィーだけだろう。一方、「持ち越し組」のなかの最有力候補はマイク・ピアッツァだと思う。通算427本塁打、2127安打は「史上最も攻撃的な捕手」の名にふさわしい。

 実際、野茂英雄とバッテリーを組んでいたころのピアッツァは、'95年に3割4分6厘/32本塁打、'96年に3割3分6厘/36本塁打、'97年に3割6分2厘/40本塁打と、恐るべき打棒をふるった。ドラフト62巡目(全体で1390番目)という低位指名にもかかわらず、ここまで伸びた選手はそうそういない。ジェフ・バグウェルやノマー・ガルシアパーラは、75パーセントの基準を満たすのがむずかしいと思う。

ふたりの救援投手も面白い存在。

 それよりも新規組に、面白い救援投手がふたりいる。ひとりはトレヴァー・ホフマンで、もうひとりはビリー・ワグナーだ。

 ホフマンは、通算601セーヴを挙げた。これはマリアーノ・リベラ(通算652セーヴ)に次いで歴代2位だ。

 ワグナーの通算セーヴ数は422にとどまっているが、彼の場合は「クリーン・セーヴ」の印象が強烈だった。要するに、抑えのマウンドに登って相手打線をピシャリと0点に抑える確率が高い。こちらを調べてみると、ワグナー=9割2分4厘、リベラ=9割2分、ホフマン=9割1分2厘という数字が残されている。WHIP(1回あたりの与四球+被安打)を見ても、リベラ=1.00、ワグナー=1.00、ホフマン=1.06。つまり、ワグナーの「瞬間風速」は、あのリベラにさえ勝るとも劣らない。ただ、ワグナーはポストシーズンの印象が悪かった。ワールドシリーズには一度も出ていないし、ポストシーズンでは14試合に登板して7試合に失点した。

 となると、ホフマンのほうが中長期的には有利かもしれない。つまり今回は無理でも、数年以内に選出される可能性が高い。彼の決め球はチェンジアップだった。過去に殿堂入りした救援投手を見ても、ホイト・ウィルヘルムがナックル、ブルース・スーターがスプリット、といった具合に、いわゆる「シグネチャー・ピッチ」の持ち主は高く評価される傾向がある。セーヴ数でいっても、3位のリー・スミス(478セーヴ)には、大きく水を空けている。しばらくは観察をつづけたい存在だ。

BACK 1 2
ケン・グリフィー・ジュニア
マイク・ピアッツァ
トレバー・ホフマン
ビリー・ワグナー

MLBの前後の記事

ページトップ