スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
グリフィーと野球の殿堂。
~得票率はどこまで伸びるか~
posted2015/12/05 10:40
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph by
Getty Images
今年も野球の殿堂入り選手を決める投票が近づいてきた。全米野球記者協会の投票締め切りが12月下旬で、発表は来年の1月6日。
投票対象となる選手は合計32人だ。なかには、今年新たに候補となった選手が15人含まれている。殿堂入りするためには75パーセント以上の得票が必要で、来季以降も候補者として残るためには5パーセント以上の得票が必要とされる。そこに満たなかったときは、対象リストから消える。
新たな候補のなかで最大の目玉は、なんといってもケン・グリフィー・ジュニアだろう。グリフィーは現役通算22年間で630本の本塁打を放った(史上6位)。しかも彼は、19歳から29歳までの11年間で398本のホームランを打っている。
まったく、マリナーズ時代のグリフィーは青天井だった。守備も巧く、ゴールドグラヴは10回受賞している。マリナーズがキングドームを本拠地としていた時代でも、あの硬い人工芝の上でダイヴを恐れなかった。
1989年から99年までの11年間に、彼は本塁打王を4度と打点王を1度獲得した。29歳までの通算本塁打数は398本、打点の合計は1152。平均OPSは.948。29歳時のハンク・アーロンと比べても(342本塁打、1121打点、OPS=.947)、まったくひけを取らない数字というべきだろう。
マリナーズを出て以降は期待外れだったが……。
ひるがえっていうと、マリナーズからトレードされた(自身が希望したのだが)あとのグリフィーは、期待外れのシーズンがつづいた。30歳から40歳まで(ほとんどがレッズ在籍)の本塁打数は232本にとどまっているし、OPSも.808に低下した。怪我の連鎖もこたえて、30本塁打以上のシーズンは3度しかなかった。
それでも、グリフィーの価値は下がらない。極端にいうなら、2000年に引退していても、殿堂入りが可能だったのではないかと思えるほどだ。当時の彼は野球少年の夢だった。リトルリーガーは、こぞって彼の打撃フォームを真似し、枕元に彼のポスターを貼った。ジョー・ディマジオ以降、そんな選手は出なかったのではないか。ウィリー・メイズやミッキー・マントルでさえ、そこまで神格化はされていない。得票率がどこまで伸びるか注目したい。