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「今のF1のつまらなさ」を象徴する、
メルセデスの行き過ぎた戦略を問う。 

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尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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photograph byGetty Images

posted2015/12/07 10:30

「今のF1のつまらなさ」を象徴する、メルセデスの行き過ぎた戦略を問う。<Number Web> photograph by Getty Images

チャンピオンを決めてからの3レース、いずれもロズベルグに敗れ2位に甘んじたハミルトン。結果的に後半戦は失速したかのような印象だった。

敗れた者が素直に勝者を称えるレースを。

 チーム内に2人の優れたドライバーを擁しているがゆえに、規律と平和を保ちたいのは理解できる。しかし、ハミルトンは故意にトップを走るチームメイトの邪魔をしようとしたわけでもなく、意図的にリタイアしてチームに損害を与えようとしていたわけでもない。ただ純粋に勝ちたかっただけだ。むしろ、レーシングドライバーとして当然の行為といえる。それを咎められれば、疑問を感じるのも当然だ。

 かつて史上最多の7冠を達成したミハエル・シューマッハーが、自身最高のレースのひとつだと語ったのが、2000年の日本GPだ。このレースでシューマッハーは3度目のチャンピオンになるとともに、フェラーリに21年ぶりにタイトルをもたらした。

 しかし、理由はそれだけではない。

 優勝争いをしていたのが、最大のライバルであるミカ・ハッキネンで、そのハッキネンと息詰まる熱戦を繰り広げたからである。それは、敗れたハッキネンに「素晴らしい勝者の影には、もっと素晴らしい敗者がいるものだよ」と言わしめるほど、死力を振り絞ったにもかかわらず、勝利に及ばなかった大熱戦だった。

 敗れた者が、レース後に素直に勝者を称える。そんなレースを、私たちは見たい。

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