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浦和と川崎の“ミラーマッチ”分析。
似てるのは形だけ、似てないものは? 

text by

飯尾篤史

飯尾篤史Atsushi Iio

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photograph byJ.LEAGUE PHOTOS

posted2015/11/11 10:30

浦和と川崎の“ミラーマッチ”分析。似てるのは形だけ、似てないものは?<Number Web> photograph by J.LEAGUE PHOTOS

中村憲剛をどこに配置するかで、川崎は戦略的な幅をピッチ上に実現することができる。

川崎の前線中央には中村憲剛が。

 だが、一見同じようでいて、そうではなかった。

 決定的に違ったのは、3トップの中央に入っていたのが、浦和はストライカーのズラタンだったのに対し、川崎はプレーメーカーの中村憲剛だったことだ。

 普段はボランチやトップ下を務める中村に、ズラタンのような相手を背負ったプレーは望むべくもない。そもそも中村は、ズラタンのようにセンターフォワードとして最前線にずっといる選手ではない。

 川崎の攻守のメカニズムを簡単に説明すると、こうなる。

 左FW船山貴之が浦和の右DF岡本拓也の、右FW小林悠が左DF槙野智章のマークに付くと、中村がセンターバックの那須大亮や、中盤から下がってきたボランチの阿部勇樹にプレッシャーを掛けに行く。ここまでは3トップの配置どおり。

 だが、川崎がボールを奪って攻撃に移ると、選手たちの立ち位置がにわかに変わる。最前線にいたはずの中村がいつの間にか中盤に下がり、2シャドーのようだった船山と小林が中村を追い越していく。それだけでなく、ウイングバックのエウシーニョや中野嘉大までもが前線に飛び出していく。

 こうして中村は、気がつけば浦和のDFと中盤の間でマークから逃れ、いわゆる“浮いた”状態となってスルーパスを連発した。

前半、川崎の守備が効果的でなかった理由。

 そうした様子は、ルチアーノ・スパレッティ監督時代のローマにおける「ゼロトップ」に近い。'07-'08シーズンのローマもまた、本来はトップ下であるフランチェスコ・トッティを最前線で起用し、彼のキープ力を利用して、2列目が次々とペナルティエリアに侵入していった。

 もっとも、川崎が完全に主導権を握るようになるのは、後半に入ってから。前半は浦和に何度もゴール前まで攻め込まれている。

「前半は前の3人が高い位置から行き過ぎてしまった」とは中村の弁。中村、船山、小林の3トップが浦和陣内でプレッシングを仕掛けたことで前線と中盤の距離が開き、中盤が3トップについて行こうとすると、今度は中盤とDFの間にスペースが生じてしまう。

 ワンタッチパスの達人、フリックパスの名手が揃う浦和が、こんなに“美味しい”状況を逃すはずがない。

【次ページ】 柏木が語った、“段差”の必要性。

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