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霜田技術委員長に聞くマッチメーク。
実り多かったイラン戦、今後は?
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byGetty Images
posted2015/11/10 10:30
アウェーでのイラン戦は、どちらも勝負への執念を見せ、得るものの多い試合になった。
現場の強化こそがマッチメークの最重要事項。
――今年、ホームだとウズベキスタンに5-1、イラクに4-0と大差をつけた試合もあります。ホーム試合を減らして、イラン戦のようにアウェーを増やすことは実際に今後起こってくるのでしょうか?
「マッチメークにおいて一番のプライオリティーは、現場の強化にあります。様々な要素が付随してくるとはいえ、現場の要望を聞いてもらっているのが現状です。イラン戦のようにアウェーでやることももちろんよいが、しかしながら全部それでいいという話にはなりません。日本のファンのみなさんの前で、日本代表を見てもらうことも大切だと思っています。
ホームでもお互いのプライドを懸けた戦いが毎回できるかどうか。相手もどれだけ本気に近い形でやってくれるのか。特に南米のチームはそれに近くて、観光気分のようでもキックオフの笛が鳴るとまるで人が変わるようなチームもあります。昨年9月に来てくれたウルグアイなどは高いテンションで戦ってくれました。アウェーも大事ですが、ホームでも公式戦に近いテンションで、真剣勝負ができるマッチメークが必要だと思っています」
外に出ていって強化を図る流れは、これから加速していくに違いない。
ザックが語った経験値の効果とは?
あのときザッケローニはこうも言っていた。
「我々のチームはいつも良いか悪いかで、真ん中がなかった。これも経験値の不足が関係していると言えるのかもしれない」と。
厳しい戦いを繰り返していくことで経験値を上げ、「悪い」内容でも「真ん中」に持っていける術を身につけることが大切なのだと、彼は熱く語っていた。その意味で押されながらも後半に追いついたイラン戦は、結果として「悪い」を「真ん中」にする経験値を上げる実践にもなった。
欧州勢ではなかったにせよ、日本がアウェーに出向いてイランと激しい戦いをしたとザッケローニが聞いたとき喜んだはずである。
ハリルジャパンは11月のW杯アジア2次予選シンガポール戦、カンボジア戦のアウェー2連戦で今年の全日程を終える。
「これからも大好きな日本を見守っていきたい」――。
ダ・ヴィンチが設計したあの港が見えるレストランから、ザッケローニも2016年のマッチメークを見つめている。