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ザック、岡田、ジーコの誰とも違う部分。
シンガポール戦でハリルが見せた新味。

posted2015/11/13 11:20

 
ザック、岡田、ジーコの誰とも違う部分。シンガポール戦でハリルが見せた新味。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

金崎夢生は、5年ぶりの招集でいきなりスタメン出場という大抜擢にゴールで応えた。

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戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

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Takuya Sugiyama

 スコアとしては快勝である。日本にとってはアウェイゲームであり、国内組も海外組も気候の違いを克服して3-0で勝点3を奪い取った。消化試合数が同じシリアを勝点で上回り、W杯アジア2次予選のグループ首位に立った意味でも、11月12日に行われたシンガポール戦の勝利には意味がある。

 スタートリストに並んだ11人には、率直に驚かされ、同時に納得させられた。チームの立ち上げからコアメンバーとしてきた槙野智章、香川真司、岡崎慎司を、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督はスタメンから外したのである。

 彼ら3人だけではない。W杯予選では3試合連続で先発していた山口蛍も、試合前の国歌をベンチで聞いた。ホームで0-0の屈辱を味わわされた6月のシンガポール戦から、スタメンが7人も入れ替わっていたのである。

 代表チームは活動期間が限られるという大前提に立って、歴代の代表監督は結成当初からメンバーを固定する傾向が強かった。アルベルト・ザッケローニ監督は典型的で、岡田武史監督もW杯出場決定までは先発に大きく手を加えなかった。

 ドイツW杯への道のりを託されたジーコ監督も、代表のレギュラーが所属クラブで先発から外れてもスタメン変更に消極的だった。'04年3月に行われたアウェイのシンガポール戦では、本調子でない海外組を先発に並べて苦戦を招いている。2-1の勝利を呼び込んだのは、国内組の藤田俊哉だった。

ザックなら香川や岡崎を外しただろうか。

 時間的制約を課せられたなかでチームの練度を高めるのに、メンバーの固定化は有効な手立てとなる。ただ、所属クラブでの好不調が度外視されたり、代表でのアピールが次回の招集につながらなかったりすると、健全な競争原理が働かない。サブメンバーには倦怠ムードが漂い、チームの隅々にまで一体感が行き渡らないのだ。

 アウェイゲームとはいっても、相手はシンガポールである。ロシアW杯で上位進出を目ざすのであれば、選手の顔ぶれにかかわらずきっちり勝利をつかまなければならない。テスト的要素が含まれたメンバーだとしても、である。

 ただ、それでもレギュラーの起用にこだわる監督が多かっただけに、63歳の指揮官の判断には驚かされたのだ。ザッケローニ監督がこの日のベンチを預かっていたら、香川や岡崎をスタメンから外さなかっただろう。

【次ページ】 新メンバーの加入は確かにチームを変貌させた。

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