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28歳の超若手監督が巻き起こす、
ホッフェンハイムの蹴球IT革命。 

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木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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photograph byGetty Images

posted2015/11/02 10:40

28歳の超若手監督が巻き起こす、ホッフェンハイムの蹴球IT革命。<Number Web> photograph by Getty Images

来季ホッフェンハイムの監督になるナーゲルスマンはU-19でSAP社の最新分析システムを導入している。

来季のブンデスは、巨大なIT実験室に。

 ナーゲルスマンは過去のインタビューで、「新しい分析システムがあっても、それを導入するかは監督次第」と語っている。もどかしさを感じていたのだろう。

 実質的オーナーのホップも、問題に気がついたのだろう。本気で革命を起こしたいなら、ITを理解する人間を現場のトップに置くしかない。

 ホップはナーゲルスマン抜擢の理由をこう説明した。

「私たちは育成をさらに発展させるために、新たな基準を作っている。それに見合う監督が必要だ」

 ホッフェンハイムにおけるIT革命は分析だけではない。メンタルトレーナーのヤン・マイヤーの監修の下、180度の巨大なスクリーンに囲まれたゲームのような設備をSAP社と開発中だ。

 その名は「ヘリックス」。

 いわゆる“ゲーミフィケーション(作業をゲーム化して楽しく進める方法論)”で、選手が中央に立ってスクリーンに映し出される仮想ピッチ上の課題をクリアし、判断速度を高める。たとえばどこにパスを出すべきか、オフサイドを取るためにラインを上げるべきか、といった判断だ。

 また、立方体の中に選手が入り、4方向からボールが発射され、指定された枠にパスをする「フットボナウト」を所有している。

 主にアカデミーの選手の技術向上に使われているが、今後はトップ選手もここでの自主トレを義務付けられるだろう。

 皇帝ベッケンバウアーが「データがゴールを生むことはない」と言うように、あくまで数字はプレーを補助するものにすぎない。だが、世界的なソフトウェア企業が本気で開発に取り組み、それを監督がフル活用したら、見たこともないサッカーがピッチに現れても不思議ではない。

 来季のブンデスリーガは、ITサッカーの壮大な実験場になりそうだ。

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