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書類トラブルでレアルに残った男。
ケイロルが12戦3失点で守護神定着!
posted2015/10/29 10:40
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph by
Getty Images
公式戦12試合で僅か3つ。ハメスやベイル、ベンゼマらが相次いで負傷離脱する中、リーガ、チャンピオンズリーグ共に無敗の首位を保つレアル・マドリーを支えているのは、113年のクラブ史上最少ペースを保っている失点の少なさだ。
そう言うと「近年の攻撃力はそのままに、よりしっかりと守れるチームに」と就任当初から繰り返してきたラファエル・ベニテス監督の思惑通りのサッカーができていると思われるかもしれないが、実際はそうではない。
アス紙の調べによれば、レアル・マドリーはリーガ第9節までに計113本、1試合平均12.5本のシュートをライバルに許している。これは攻撃偏重のシステムで戦っていた昨季の同11.9本を上回る数字だ。
つまり昨季と比べ、少なくとも「相手にシュートを撃たせない」という点で守り方が向上しているわけではないのである。
枠内シュート31本中、27本を止めたケイロル。
にもかかわらず、なぜ同時点で12失点(リーガ10、CL2)を積み重ねた昨季とは裏腹に、今季は僅か3失点にとどまっているのか。
答えは簡単。枠内に飛んだシュートのほとんどを守護神ケイロル・ナバスが止めているからだ。
113本の被シュートのうち、枠内シュートは31本。ケイロルはそのうち27本、つまり87%をセーブしている。しかもその中には、勝敗に直結する相手の決定機を阻止したスーパーセーブがいくつも含まれている。
中でも特筆すべきはアントワン・グリエスマンのPK、ゴール右隅を捉えたジャクソン・マルティネスのシュートをいずれも横っ飛びセーブではじき出した第7節アトレティコ・マドリー戦(1-1)だ。ちなみにケイロルは第2節ベティス戦(5-0)でもルベン・カストロのPKを止めており、ここまで2分の2、100%のセーブ率を誇っている。
他にも第4節グラナダ戦(1-0)、第5節アスレティック・ビルバオ戦(2-1)、第6節マラガ戦(0-0)、CL第3節パリ・サンジェルマン戦(0-0)などはみな、ケイロルの好守があったからこそ負けずに済んだ試合だった。最終的に3-0で勝利した第8節レバンテ戦も、やはりケイロルのセーブがなければ勝てていた保証はなかった。
つまり今季のレアル・マドリーは大勝した数試合を除き、接戦となった試合は全てケイロルのセーブに救われて勝ち点を手にしてきたのである。