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チーム全員に徹底された“ベーシック”。
車いすバスケ男子日本代表、リオへ。
text by
宮崎恵理Eri Miyazaki
photograph byAFLO
posted2015/10/29 11:00
日本代表キャプテンの藤本怜央(右から2番目)は韓国戦で28得点の活躍。2014年からはドイツのハンブルガーSVでもプレーしている。
世界が変わった、小学6年の車いすバスケ体験。
香西は、先天的に両脚の太腿から下がない。子どものときから車いすを使い、野球でもサッカーでもみんなと一緒に楽しんできた。
「ピッチの中では邪魔者ナンバーワンでしたけどね(笑)」
小学6年の時に、車いすバスケの体験会に参加して、世界が変わった。
「競技用の車いすは、すごいスピードで走ったりクルクル回ったりできる。もう、純粋に楽しかった」
地元・千葉にある千葉ホークスには、現在、日本代表のアシスタントコーチを務める京谷和幸がいた。京谷の誘いで千葉ホークスに所属。「すごいね! 巧いね!」と褒めちぎられて、香西はますます車いすバスケに夢中になった。
そうして、14歳の時にイリノイ大学のジュニアエリートキャンプに参加。高校卒業後はイリノイ大学に留学。現・日本代表の中でも、及川とともに、もっともフログリーの“ベーシック”をマスターしている一人である。
1000枚以上の資料で代表全員に知識を徹底。
「強化指定選手のうち、例えばスタメン5人だけがベーシックを理解していても意味がない。全員に浸透していないと」
及川ジャパンが発足した時に、最初に注力したのが、「ベーシック」を徹底的に理解させることだった。
「パラリンピックで頂点を極めようとするなら、博打で勝利するなんてことはあり得ない。しっかりした土台を作って、このレベルは確実にコートで実現できる、という確かなスキルを身につけさせること。そのためにも、車いすバスケの理解力をいかに、全員に徹底させるかがカギでした」
日本代表の強化指定選手となっても、常に同じコートで練習できるわけではない。年間約60日程度である代表合宿の練習時間は限られている。
「1000枚以上に上る資料を作成して配布しました。合宿に来る前に、知識として共有できるように」
かなりの情報量である。これを咀嚼し普段のチーム練習で実践した者だけが、最終的に代表メンバーとして残っていくのだ。