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<義足ランナーの可能性>
為末大の挑戦「パラリンピアンがオリンピアンを超える日」
text by

川上康介Kosuke Kawakami
photograph byphotographs by Takuya Sugiyama
posted2015/11/02 06:00

遠藤謙(左)、為末大。
神奈川県小田原市の陸上競技場で行われた練習風景を見学した。最新の競技用の義足を身につけ、トラックを驚くほどのスピードで駆ける義足ランナーたちの姿は、素直にかっこよかった。為末大が数年前に感じたのも、同じような印象だったのだろう。
「2009年、私は米サンディエゴのオリンピックセンターで練習をしていました。アメリカでは負傷した退役軍人がスポーツを楽しむことが多く、このオリンピックセンターでもそういったパラリンピアンがたくさん練習をしていたんです。最初は、私も彼らを見て『大変だなあ』とか『頑張っているな』と思っていた。でも彼らの走りや跳躍を見て、彼らと話し、彼らを知るようになって、パラリンピアンも自分と同じアスリートだということに気がついたんです。よく一緒に練習をしていたアフリカ系の選手は、スタートダッシュこそ遅かったものの、義足を巧みに扱うことでバックストレートでは、驚くようなスピードを見せ、さらにそれを維持することができた。その走りは、明らかにオリンピアンとは異なります。でもまったく別の迫力、魅力があったんです」
この日、練習をしていた義足ランナーは3名。彼らは、為末とソニーコンピュータサイエンス研究所のエンジニア、遠藤謙を中心に立ち上げた「Xiborg」という会社に所属する選手だ。Xiborgは、パラリンピアンのトレーニングを行いながら、義足のイノベーションに取り組んでいる。為末が長年の競技人生で蓄えてきたアスリートとしての知識、感性と遠藤が持つ開発技術を結集し、義足ランナーの新たな可能性を広げようとしている。