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チーム全員に徹底された“ベーシック”。
車いすバスケ男子日本代表、リオへ。
posted2015/10/29 11:00
text by
宮崎恵理Eri Miyazaki
photograph by
AFLO
10月10日に開幕した車いすバスケットボールのアジアオセアニアチャンピオンシップで、男子日本代表が3位決定戦で韓国を降し、リオデジャネイロ・パラリンピックの出場権を獲得した。
キャプテンの藤本怜央は、試合後にこう言った。
「どういう状況の中でも、僕らの約束ごとである“ベーシック”を全員で発揮した。その一体感が、今回の勝利、出場権獲得につながった」
もう一人の日本のエース、香西宏昭も語る。
「いつも通り、僕らが積み上げて来た“ベーシック”で勝ち取れた」
藤本は、海外勢に劣らないフィジカルでタンクのごとく疾走するセンター。3決の韓国戦でも28得点を挙げて日本を勝利に導いた。一方、香西はそのスピード、ボールハンドリングを武器に、コートを縦横に駆け回り、インサイドでも3ポイントでも自在に決められる、シューティングガード。2人は、ともにドイツのブンデスリーガでプレーする。日本が誇るダブルエースである。
車いすバスケにおける「ベーシック」とは?
ベーシック。
ヘッドコーチの及川晋平、そして選手の誰もが、ミックスゾーンで何度でも口にしたキーワードだ。ロンドン・パラ以降、及川ジャパンが発足し、チームの共通語となっていたのが、「ベーシック」だった。
「ベーシック」とは、一言で言えば、車いすバスケというスポーツを科学的に分析したベーシックスキルのことである。
車いすバスケでは、使用するコートやゴール、ルールのほとんどが一般のバスケと同様である。ただ、車いすバスケ特有の動きというのは存在する。
一例を挙げよう。車いすバスケでは、真横への瞬間的な移動はできない。いったん、前後に車いすを動かしてから移動する。その分、相手の車いすの動きを、自分の車いすを使って封じ込めることができる。逆に相手に封じ込められたら、いかに抜け出すかというチェアワーク(車いす操作)や、クィックネスが重要になるわけだ。相手に負けない、あるいは出し抜く技術、パワー、そしてメンタル。1対1、2対2といった局面での個の高い力が、チーム全体の戦術に大きく関わってくる。