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<井上雄彦が密着取材>
車イスバスケ日本代表、いざ、ガチンコ勝負!!
posted2015/10/08 10:00
text by
名古桂士Keishi Nako
photograph by
Shinji Hosono
男子日本代表“シンペーJAPAN”は、アジアオセアニアの強豪との勝負を制することができるか。
大人気コミック『リアル』の取材を通して車イスバスケを見つめ続けてきた井上雄彦が語る! Number887号掲載記事を特別公開します!
車イスバスケットボールのリオパラリンピック出場をかけた「2015 IWBFアジアオセアニアチャンピオンシップ」(AOZ)が、千葉ポートアリーナで10月10日から開催される。今大会、男子は3つの出場枠に対し、12カ国・地域が参加。世界王者のオーストラリアが飛び抜けた存在であり、残る2枠を日本、韓国、イランの3カ国が争うと見られている。
遡ること4年前の2011年11月9日、韓国・高陽市で開催された同大会では、ロンドンパラリンピックへの最後の1枠をかけて日本と韓国が直接対決。車イスバスケ史に残る死闘を繰り広げた。
「何度突き放しても、じわじわと追い上げてくる。あの日の韓国には強さより不気味さを感じました」と現日本代表キャプテンの藤本怜央は振り返る。
韓国に逆転され、日本が1点ビハインドの試合時間残り30秒。藤本のバンクショットのリバウンドを「ここに落ちてくるという予感がした。時間が止まって、自分だけが動いているようでした」と京谷和幸がキープし、宮島徹也が押し込んで日本が逆転に成功する。しかし、試合はこれで終わらなかった。韓国は最後の攻撃で、微妙な判定ながらエースのキムがフリースローを得る。残り0.3秒、1本で同点、2本で逆転。ホームの韓国応援団が大歓声を上げた。
静寂の中、1本目が外れる。プレッシャーを撥ね除けるように淡々と放った2本目もゴールからこぼれる。リバウンド争いから高さのあるキムが自らボールをキャッチした瞬間、試合終了のブザーが鳴った――。
井上雄彦「マンガで描いても出来過ぎだろう」
この試合を現地取材していた井上雄彦はラストの数分間をこう回想する。
「車イスバスケでは、ゴール下は動けて高さもある選手の仕事場。しかしあの場面、そこにいるはずのない障害の重いクラスの京谷選手がリバウンドを獲って、宮島選手の逆転ゴールにつながった。鳥肌が立ちました。そして最後に韓国のエースがフリースローを外して決着するという……マンガで描いても出来過ぎだろうというような展開が現実に起きました。勝負のいろいろなものが詰まった濃厚な場面でした」