サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
日本がアジアで失いつつある「優位性」。
ハリルJのミス連発が示す技術力崩壊。
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph byGetty Images
posted2015/10/14 13:15
1対1の攻防(デュエル)での弱さが目立ったハリルJ。フィジカルの差だけでなく、技術的にも差があるとしたら……。
監督が代わっても、日本サッカーのベースは不変。
ショートパスをつなぎ、ボールポゼッションをしながら試合を進めるのが、いつの時代も日本代表のスタイル。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が就任してからは縦に速いサッカーを志向しようとはしているが、監督による戦術スタイル云々以前に、日本のベースにはいつもボールを繋ぐサッカーが存在してきた。
技術を発揮し、アジア相手に対抗する。そんな目指すサッカーが、特に前半はイラン相手に表現できなかった。
イランは、最終予選の戦いを睨んで選んだスパーリング相手だ。現在2次予選で戦う各国よりもレベルは高く、日本相手に積極的に攻めに出てくる。一方で守備になると、前からプレッシャーをかけてくるというよりは、しっかり引いてブロックを形成してきた。
日本は速攻を仕掛ける場面では、パスの出し手と受け手のタイミングが合わず、正確性を欠いたパスがただイラン陣内に送り込まれるだけ。この日1トップに入った武藤嘉紀や宇佐美貴史が相手DF裏のスペースを狙っても、その動きは空回りに終わる。
繰り返される弱いパスにトラップミス。
一方、遅攻は日本の基本スタイル。低い位置から丁寧にボールを回していく形である。そこでもイランは前述の守備ブロックを盾に、しっかりと日本を跳ね返していく。ブロックを作っている選手たちは、日本の選手たちよりも体格が勝る者ばかり。日本は、その肉厚で屈強な選手たちの密集地帯を破れずにいた。
密集を破るためには、技術が不可欠。それは何度も言うように、歴代の日本が武器にする要素だ。
しかし、選手たちが見せてしまったのは、長い芝目に負ける緩く弱いパスやトラップミスだった。香川真司は足元にボールがつかず、本田圭佑もかつてのようにスルーパスを通せない。柴崎岳は強固な敵陣を前に、前方にパスを入れることをためらってしまう。体格で劣る日本人が、テクニックでも勝ることが出来ないという現実。パワーとスピードを前面に押し出すイランに、苦しい展開を強いられたのは至極当然の結果である。