プロ野球亭日乗BACK NUMBER
問題の本質は「誤審を認めた」こと。
映像が審判の裁定に優先する時代に。
posted2015/09/18 10:50
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
NIKKAN SPORTS
日本のプロ野球も新しい時代に突入した。
その事実をNPB関係者はもちろん、現場やフロント、メディアも、すべてが受け入れなければならないと痛感させられた。
その象徴的な事件が、9月12日の阪神対広島戦(甲子園)で起こった誤審問題だった。
2-2の同点で迎えた延長12回1死。広島・田中広輔内野手の放った打球はセンターのフェンスを越えて、侵入防止のためにスタンド側に張られていたワイアーに当たってグラウンドに跳ね返ってきたが、審判はインプレーと判定して三塁打となった。
すぐさま三塁ベンチから広島の緒方孝市監督が飛び出し抗議した結果、ビデオ判定を行うことになったが、「バックスクリーン方向からの映像を見た。3回映像を見て(審判団の)意見が一致した。ラバーとフェンスのところに跳ね返っていた。(フェンスの)上は越えていない」(責任審判の東利夫三塁塁審)として判定は変わらないままに試合は続行された。
「認めたことに驚いた」という言葉の意味。
ところが広島側から判定の経緯の説明を求められたNPBは、改めて当該審判団とビデオを再検証した結果、14日に本塁打であったことを認めて誤審を謝罪した。
「(審判団は)後ろのワイアーに当たって跳ね返ってくるとは想像もせずに、そういう観点からビデオ検証を行っていた。再三にわたりビデオを検証した結果、打球はフェンスを越えているという判断に至った」
NPBの杵渕和秀セ・リーグ統括は、球場の構造は理解していたとした上で、思い込みから誤審に至った経緯をこう説明。「今後は先入観なしに検証するよう徹底をはかりたい」とした。
これが今回の騒動の顛末だった。
2010年にビデオ判定が導入されてから6年目。ビデオ判定での誤審が公になったのはこれが初めてのことだったが、ことの本質は誤審そのものではないように思う。
「(誤審を)認めたことに驚いた」
当該球団である広島・松田元オーナーの発言が、この騒動の隠れた本質を突く象徴的なコメントだった。