モータースポーツ解体新書BACK NUMBER
モータースポーツのカテゴリーが
複雑に分かれているのはなぜ?
posted2015/09/16 12:00
text by
大串信Makoto Ogushi
photograph by
Junya Igarashi
モータースポーツは難しくて取っつきにくい、という声をよく耳にする。F1なら知っているが、その他の種目とF1がどう違うのかよくわからない、モンテカルロラリーだとかGTだとか、市販車のような形のクルマが走っているかと思えば、ル・マン24時間を走っているようなレーシングカーもある。それぞれ何が違うのか。モータースポーツに馴染みのない人が感じる疑問や抵抗感は当然だ。モータースポーツの規則はあまりにも複雑に入り組んでいるからだ。
モータースポーツは、自動車の誕生とともに始まった、と言われている。大袈裟な比喩ではない。現在、主流のガソリン自動車が発明されたのは1885~1886年ごろのことだが、最初の自動車レースは1894年、ガソリン自動車の誕生からわずか8年~9年後にフランスのパリ・ルーアン都市間レース(約127km)として開催されたという記録がある。人間は、とにかく何かにつけては競争したがる生き物ということだ。
最初は「自動車の性能比べ」。
もっとも、このとき行なわれた競争は、正確には参加者が持ち寄った自動車の速さあるいは耐久性を競う「自動車レース」であった。「オマエのクルマよりオレのクルマの方が速くて丈夫だと思うけど、比べてみない?」という発想だ。おそらく初期のモータースポーツはモータリゼーションの拡大とともに「自動車の性能比べ」として発達していったのだろう。
だが、こうした競争をしているうち、自動車を速く走らせる際に、ドライバーのテクニックが大きな意味を持ち、そのテクニック次第で競技の結果が変わる可能性があることに気づき始めた人がいた。
その能力差を競えば、「スポーツ」になりうるのではないか――。
こうして自動車レースにおける自動車と人間の関係が変化し始めた。実際、最初のレースである「パリ・ルーアン・トライアル」の席上、自動車レースをモータースポーツとして成立させるための規則を整備する団体であるフランス自動車クラブ、いまのFIA(国際自動車連盟)の母体となる団体が組織されている。だが、「自動車の競争」を「スポーツ」として成立させるのは容易ではなかった。