モータースポーツ解体新書BACK NUMBER
モータースポーツのカテゴリーが
複雑に分かれているのはなぜ?
text by
大串信Makoto Ogushi
photograph byJunya Igarashi
posted2015/09/16 12:00
伝統のル・マン24時間耐久レースでのトヨタ。今年のLMP1ハイブリットクラスには、ハイブリット技術で世界をリードするトヨタをはじめ、ポルシェ、アウディなど巨大メーカーがこぞって参戦した。
エンジン出力と車体改造範囲で分類。
その基本になるのは、エンジンの排気量を基本とした出力の規定と、車体の改造範囲の規定である。
近年でこそ電気を用いたモーターを組み合わせたハイブリッドシステムも一般化したが、自動車の走行性能の基本は、エンジンで燃料を燃やして生まれるエネルギー源の大小で決まる。対等な競争を成立させるためにはまず出力のクラス分けが必要となる。基本的にはエンジンの排気量などで性能の区分けが行なわれる。フォーミュラカーならF3~F1、クローズドカーも排気量に応じてクラス分けがされる。
また自動車の性能競争が主体となるクローズドカーの場合は、改造範囲もクラス分けの基準となる。
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クローズドカーの場合、その理念上、一般市販されている量産車をベースに改造を加えた競技車両が用いられることが多いが、たとえば誰でも運転でき安価に入手できるファミリーカーと、比較的高価で高い走行性能を有するスポーツカーでは、同じ排気量でも市販状態ですでに性能差が存在する。これでは、公平性は成立しない。そこで車両規則の原則として、市販車ベースの競技車両の場合、年間生産台数に応じてクラス分けが行なわれる。
ボクシングの階級分けに似ている。
加えて、改造範囲を制限することでもクラス分けが行なわれる。場合によってはクローズドカーであっても、フォーミュラカーのようにレース専用の開発を許したクラスも存在する。世界耐久選手権(WEC)を闘ういわゆるスポーツプロトタイプカーや、国内SUPER GTを闘うマシンなどは、生産台数に関係なく、それぞれ独自の車両規定に沿ってレース専用に開発されたクローズドカーである。一方、市販車に簡単なチューニングを施した程度のスーパー耐久やワンメイクレースなどもある。
こうしたクラス分けは複雑で分かりにくいが、ボクシングの階級と考えれば、少しは理解しやすくなるかもしれない。ミニマム級からヘビー級まで体重別に分かれているのは、体重差によるハンデをなくし、イコールコンディションにするためだ。モータースポーツのクラス分けも、基本的には「スポーツ」として成立させるためなのである。
もう一つ、モータースポーツは競技を行なう場所によってもカテゴリーが分かれている。