錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
錦織圭のライバルは誰になるのか?
“ポスト・ビッグ4”世代を考える。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byHiromasa Mano
posted2015/08/24 16:05
2012年、ウィンブルドン選手権の3回戦で対戦したデルポトロ。この時も錦織は3-6、6-7、1-6で敗れていた。
ライバル最右翼は同じ指導者をルーツとするチリッチか?
〈ポスト・ビッグ4〉世代の中心である錦織がその一翼を担うのは当然のこと。メディアは錦織とライバル関係を確立する同世代の選手の出現を待ち望んでいる。実力のみならず、コントラストをなすキャラクターでありながらいずれも敬愛に値するという“フェデラーvs.ナダル”という理想のライバル像が、次世代の選手たちに突きつけるハードルは高い。
そんな中、錦織が通算10個目のツアータイトルを獲得したワシントン大会の準決勝が注目された。昨年の全米オープンの決勝で時代の重い扉をともに開いたマリン・チリッチとの、それ以来となる再戦だったからだ。
チリッチは錦織より1つ年上の26歳。錦織が肘の故障で丸1年コートに立てなかった間に、21歳で全豪オープン・ベスト4入り、直後にトップ10入りと、錦織の先をゆく実績を残していたが、錦織が復帰して1回目の対戦となった2010年の全米オープンはフルセットの大接戦で錦織が制している。
チリッチは、松岡修造氏の恩師でもあるボブ・ブレット氏の教え子であり、錦織が“発掘”された〈修造チャレンジ〉で松岡氏をサポートしてきた人だ。錦織は対戦の前に「ボブさんがコーチというのがやりづらい」と苦笑していたが、こうした因縁めいた下地もあり、当時20歳と21歳だった〈錦織vs.チリッチ〉はテニスの未来を描く1つの希望だったといえるだろう。
6勝3敗のチリッチだとライバルとは呼びにくい!?
今回のワシントンでは錦織が3-6、6-1、6-4で逆転勝ちし、メディアにはリベンジという見出しが躍ったが、対戦成績はこれで錦織の6勝3敗……若い頃からのライバル関係と呼ぶにはちょっと少ない。たとえばジョコビッチは今の錦織と同じ25歳のときにすでにナダルとは33回も対戦し、フェデラーとも29回対戦している。
錦織にはもうひとり、ライバル視される同世代の選手、ミロシュ・ラオニッチがいるが、それも対戦回数は7回にすぎず、錦織の5勝2敗だ。
ビッグトーナメントで準決勝、決勝と勝ち残っていかなければ上位シード同士の対戦回数は増えていかないから、錦織世代のライバル関係がなかなか成熟しない背景にも〈ビッグ4〉の厚い壁が存在したといえる。しかし、昨年の全米オープンで錦織はラオニッチとの4度目の対戦を前に、「このところ、なんかいつも同じ山にいるなと薄々感じています(笑)。去年くらいからですかね、なんか(ラオニッチの存在が)気になり出して、戦いにくい相手ではありますけど、これからも勝っていかないといけない相手だと思っています」と〈ライバル意識〉をほのめかしてもいる。