セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
破産後に首位ユベントス撃破も……。
消滅したパルマFC、その後。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2015/07/15 10:40
3月に破産を迎えたパルマFCだが、4月11日にリーグ首位ユベントスを破り意地を見せた。選手だけでなくイタリア中が沸いた。
「たとえアマリーグに落ちても、主将として残る」
新しいクラブは、バリッラら8人が協同経営にあたる一方、クラブ株式の2割が一般サポーターに開放される。一口500ユーロからクラブの出資者になることが可能で、代表者を経営会議にも送り込める仕組みは、イタリアでは画期的だ。怪しげな個人投資家によって、監視の目もなく、負債を膨らませ続けてきたパルマFCの乱脈経営へのアンチテーゼになるだろう。パルマFCの経営危機へ積極的に介入してきたピッツァロッティ市長も、新クラブへの行政支援をいち早く表明した。
「たとえアマリーグに落ちても、主将としてパルマに残る」と熱弁を振るっていたDFルカレッリは、公約通り新チームに残った。'90年代のバンディエラの一人、ルイジ・アポッローニも、パルマの再出発に監督として戻ってきた。
新会長に就任したのは、'90年代初頭にカップ・ウィナーズ・カップなど4つのタイトルを獲得した名将ネヴィオ・スカラだ。
「もし財布に100ユーロあったら、80ユーロだけを使う。そういう至極真っ当なコンセプトの下で、我々がやりたいのは、有害なものや添加物を省いた自然食品のようなサッカーだよ。セリエDからの再出発も怖れるところではない」
彼らの名をもって、パルマFC栄光の遺産は継承された、と言いたいところだが、スカラ新会長は就任に際して、巨大投資と資金回収のサイクルから成る現代サッカーの潮流に背を向けることへの難しさにも言及している。
いつか戻ろう、セリエAへ。
破産宣告を受けてからの96日間、パルマは足掻きに足掻いた。その分、新クラブに携わる者たちの表情は、憑き物が落ちたように晴れやかだ。
昨季のホーム最終戦、パルマはベローナ相手に引き分けた。試合終了の笛が吹かれた後、どこからともなく大きな拍手と盛大なコールが始まった。スタジアム中が歌っていた。
「Torneremo in Serie A! (いつか戻ろう、セリエAへ!)」
パルマがセリエAへ帰ってくるのに、どれほどの時間を必要とするのか、今は誰にもわからない。けれど、2015年の夏、パルマのサッカーは再び新たな一歩を踏み出した。