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破産後に首位ユベントス撃破も……。
消滅したパルマFC、その後。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2015/07/15 10:40
3月に破産を迎えたパルマFCだが、4月11日にリーグ首位ユベントスを破り意地を見せた。選手だけでなくイタリア中が沸いた。
破産後にリーグ首位ユベントスを破るが……。
実際に何カ月も給料を手にしておらず、明日が見えないままの選手たちの心身は、すでにかなり摩耗していた。だからこそ、首位ユベントスを1-0で破った30節の大番狂わせは、国中を沸かせただけでなく、チームと町に一刻の活力を与えた。
ASモナコとのCL準々決勝を控えてメンバーを落としていたとはいえ、4連覇を目前にしていた王者ユベントスを撃破した監督ドナドーニは、「(怒りに満ちた)今のパルマを相手にすれば、ユーベといえども何もできなかった」と胸を張った。前節のインテル戦では、サンシーロで1-1のドローに持ち込んでいた。パルマは、破産が決定した後の5試合で2勝2分1敗の成績を収め、意地を見せたのだ。
だが、残留を夢見るにはすべてが遅すぎた。0-4の大敗を喫した33節ラツィオ戦のタイムアップとともに、パルマの降格が、計算上確定した。
指揮官ドナドーニは「残る試合も誇りと魂をこめて戦い抜く」と誓ったが、選手たちのストレスはピークに達しようとしていた。この頃には、FWビアビアニーに続いて、FWベルフォディルら中心選手たちが自主的に契約解除へと動き出しており、沈みゆく泥船から脱出しようとする者を非難することもできず、チーム内の動揺は濃度を増していった。
競売入札者がいない。
降格確定から1週間後の5月6日、破産したパルマFCの経営権譲渡に関する第1回競売が行われた。設定された最低入札価格は2000万ユーロだった。
入札主には、この時点で総額7400万ユーロ分も滞っている選手への未払い賃金も肩代わりすることが求められる。パルマが来季セリエBへ参戦するためには、規約上この全額が支払われなければならない。
大方の予想通り、入札はゼロだった。
パルマ地裁が第2回以降の入札に向け、最低入札価格を段階的に引き下げる一方、負債額を減らすことに腐心する管財人たちは少々強引ともいえる手法で、現在パルマに所属している選手はもちろん、下部リーグや別クラブへレンタルされている100人近い保有下選手たちへ、未払い分年俸の半額以上を断念するよう迫った。