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破産後に首位ユベントス撃破も……。
消滅したパルマFC、その後。 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2015/07/15 10:40

破産後に首位ユベントス撃破も……。消滅したパルマFC、その後。<Number Web> photograph by Getty Images

3月に破産を迎えたパルマFCだが、4月11日にリーグ首位ユベントスを破り意地を見せた。選手だけでなくイタリア中が沸いた。

大幅減俸は仲間との亀裂ももたらした。

 入札へのハードルを下げることが、来季のセリエB参戦への望みにつながることに一定の理解を示す選手たちやテクニカルスタッフの大部分は、管財人からの削減要求に従い、もともとの契約年俸から80%カットという大幅減俸を渋々受け入れた。選手代表として交渉の先頭に立つ主将ルカレッリは、1月下旬に契約解除して真っ先にチームを出て行った元エースのFWカッサーノを「エゴイストだ」と非難した。

 だが、中には若手MFマウリのように「自分には契約した額をもらう権利がある」と合意を拒否した者もいた。選手たちの契約内容、とりわけ年俸額はそれぞれ大きく異なる。ユーベ戦で殊勲の金星ゴールを挙げたマウリの昨季推定年俸は約4万ユーロに過ぎなかった。管財人の要請通り、マウリが8割削減を呑んでしまえば、1年間働いても実際手にするのはわずか110万円弱、ということになるのだ。

「マウリは自分勝手すぎる」「いや、彼は正しい」

 パルマ内部の窮状は、不景気に喘ぐイタリア国内の世論をも二分した。

 契約解除という道を選ばず、最後までチームと戦い抜くと決めた選手たちは、給与未払いという直接被害だけでなく、仲間たちとの亀裂という大きな傷跡も背負うことになってしまった。35節ナポリ戦では、ゲーム中に苛立ったFWイグアインから「潰れたクラブのくせに! 降格野郎どもが!」と侮蔑まで受けた。

どう転んでも禍根が残る。

 それでも、明日知れぬ精神的重圧の中で、パルマの選手たちはプレーすることを放棄しなかった。それは、プロサッカー選手としての自尊心の問題だった。

 彼らの2014‐15年シーズンは、5月31日のサンプドリア戦をもって終了した。だが、誰もがパルマFCを残そうと必死だった。

 管財人が奔走した負債削減策が実り、支払義務を伴う未払い給与額は2260万ユーロにまで抑え込まれた。ただし、やはり近年に破産し、再建に成功したバーリやペスカーラといった地方クラブのケースと比べて、“より知名度のあるパルマの救済は、リーグ機構側から優遇されているのではないか”と選手協会から疑問の声が上がった。パルマFCは、救済されようが消滅しようが、誰かしらに禍根を残さずにはいられない存在になっていた。

6回目の競売にも……。

 クラブの経営権競売は、当初予定されていた5回を終了しても、入札主は一人も現れなかった。

 最低入札価格を450万ユーロにまで引き下げた追加開催が6月9日に行われたが、そこでも手を上げる人間はおらず、最後の望みとされたシチリア系移民の血を引く元メジャーリーガー、マイク・ピアザも、買収額と未払い給与額に加えて、向こう3年間のうちに支払義務が発生する8200万ユーロの別負債の存在を知ると逃げ出していった。これによって、パルマFCが、プロクラブとして来季セリエBへ参戦する道は完全に断たれたのだった。

 6月22日、パルマ地裁は、管財人の管理下にあった暫定予算執行期間の終了を宣言。「パルマフットボールクラブ株式会社」は消滅した。

【次ページ】 選手の契約はすべて無効、フリーに。

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