なでしこジャパンPRESSBACK NUMBER
なでしこの決勝進出は「運」なのか?
最後まで走った大儀見の、ある確信。
text by
栗原正夫Masao Kurihara
photograph byAFLO
posted2015/07/02 16:40
グループリーグから徐々に調子を上げてきたなでしこだったが、強敵イングランドには最後まで苦しめられた。それでも勝つのが、彼女達がなでしこたる所以なのだ。
狙われた鮫島は、空中戦を諦めて守り方を一変。
一方、守備でこの日最もイングランドに苦しめられたのが左SBの鮫島彩だ。マッチアップした相手は、181センチの長身J・スコット。序盤は意図的に高さで勝負され苦戦したが、試合途中に守り方を変えて臨むなど最後は何とか凌いだ。
鮫島はそんな展開をこう説明する。
「これまで対戦したなかで、間違いなくいちばん嫌なサッカーをやってくる相手でしたね。分析にはなかったのですが、序盤から8番(J・スコット)に私のところを完全に狙われて。2度、3度ハイボールを競り合っても、まったく勝てる感じがしませんでした。それで、すらされたボールへほかのFWに走られ、ピンチになった場面もあった。
だから、もう競り合っても勝ち目がないので、8番の対応はあやさん(宮間)とルミ(宇津木)に任せて、私は引くようにしたんです。そのおかげで、全体的にラインも低くなってしまい、なかなか前に進めない展開になってしまった。でも、耐えるところで耐えたからこそ、最後は結果につながったんだと思います」
J・スコットとの勝負をすぱっと諦め、1度引いて、味方のプレスバックを待つことで危機を回避したというのだ。
決勝の相手は宿敵アメリカ。
決勝トーナメントに入ってから、3試合連続で同じスタメンを組んできたなでしこ。膠着した展開を打開する交代カードが岩渕以外に見えない課題は残ったが、この日も粘り強い守備は健在だった。
決勝の相手は、前回のドイツ大会、'12年のロンドン五輪でも顔を合わせた宿敵アメリカ。4年前はPK戦の末の勝利、3年前は1-2と競り負けているだけに、連覇達成に向けこれ以上ない倒しがいのある相手ではないか。