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なでしこの決勝進出は「運」なのか?
最後まで走った大儀見の、ある確信。
text by
栗原正夫Masao Kurihara
photograph byAFLO
posted2015/07/02 16:40
グループリーグから徐々に調子を上げてきたなでしこだったが、強敵イングランドには最後まで苦しめられた。それでも勝つのが、彼女達がなでしこたる所以なのだ。
支配率は上回ったが、シュート数は半分以下。
前半、ボール支配率こそ55%となでしこが上回ったものの、ボランチの阪口夢穂も「自分たちでボールを持って、攻めている印象はまったくなかった」と振り返るほど。開始1分も立たない間に、J・テイラーにあわやというシュートを許すと、5分には左サイドを相手の右SBのL・ブロンズに突破されるなど、危ない場面が続いた。
33分に今大会ここまで好調の右SB有吉佐織の飛び出しが相手DFのファウルを誘い、PKを獲得。これを宮間あやが冷静に沈めて先制したが、40分には自陣CKから相手にPKを許し、前半は1-1。どちらのPKも“物言い”が付いてもおかしくなかったが、双方1本ずつということで帳尻は合っていたと見るべきか。
後半も前半以上に苦しく、自陣で相手の攻撃を凌ぐ展開が続いた。
「パスをつないでボールを運ぶことができず、カウンター頼みになってしまった。セカンドボールもなかなか拾えずに、正直めちゃくちゃしんどかったです」(阪口)
62分にはT・ダガンの強烈なミドルシュートがクロスバーを直撃し、64分にはE・ホワイトの左足シュートを海堀あゆみが辛うじてセーブするなど、いつゴールを奪われてもおかしくない展開だった。
日本は70分に大野に代えて岩渕を投入すると、その岩渕の仕掛けからチャンスになりかけた場面もあったが、終わってみればボール支配率で上回りながらもシュート数では7対15と圧倒されており、いかに苦しかったかがわかるだろう。
最後は92分、1本のカウンターから川澄奈穂美が右サイドを駆け上がり、それに反応した大儀見優季にパスが出たところを相手DFのL・バセットがオウンゴール。なでしこにすれば、まさにサッカーの神様が微笑んでくれたとしか思えないような劇的な結末だった。
大儀見「前の自分ならイライラしてしまっていた」
もちろん、勝利のすべてを幸運で片付けることはできない。
オウンゴールを誘ったFW大儀見は、その場面についてこう振り返った。
「終盤は相手も足が止まってきていた。ナホ(川澄)からボールが来る前も(マーカーのL・バセットは)苦しそうな顔をしていたし、自分もキツイ状態だったけど、スプリントをすればチャンスが来ると思った。もちろんラッキーだった部分もある。でも、事故みたいな形でも1チャンスは絶対来ると思っていた」
そして、大儀見はこうも付け加えた。
「前の自分なら(ボールが前線に来ず)イライラしてしまっていた部分もあったと思うけど、そこを我慢できるようになってきた」
耐える展開が続いていたものの、味方を信じて走ったからこそ、生まれたゴールだったのだ。