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早稲田、8年ぶりの予選会でも4位。
相楽新監督が語る全日本大学駅伝。 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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photograph byTakeshi Nishimoto

posted2015/07/03 11:00

早稲田、8年ぶりの予選会でも4位。相楽新監督が語る全日本大学駅伝。<Number Web> photograph by Takeshi Nishimoto

箱根の「花の2区」で区間賞を獲った経験もある最上級生、高田康暉。早稲田が待望する「エース」の走りができるか。

コーチと監督、立場の違いが生んだ心構えの変化。

 相楽監督は、もともと早稲田大学の職員として仕事をしながらコーチングを行っていたが、監督になったいまはフルタイムで指導に当たり、生活は一変した。

「コーチは現場だけに集中できる立場ですが、監督になると大学との交渉や高校生のリクルーティングなど、いろいろな仕事が増えてきます。ただ、いちばん変化したのは『当事者としての意識』でしょうか」

 コーチと監督では、大会、レースに対する心構えに変化があるという。相楽監督は「渡辺さんには、ちょっと申し訳ないんですが」と苦笑しながら、その違いを話した。

「コーチ時代は、結果を受けて冷静に分析した上で渡辺さんに視点を提示するのが自分の役割でした。いまは結果をダイレクトに受け止める立場にあります。全日本の予選でも4位、悔しいです。コーチの時は感情を抑えて、原因を探っていたと思いますが、いまは違います」

 相楽監督は、こう付け加えた。

「反省することが多くなりました。そして、反省が深くなりました」

「相楽ノート」は自分でも判読不能!?

 反省が深くなった分、思考も深化していく。考える時間が増えたのだ。

 練習前に部員を前にして話をすることなどは「前もって準備しておきます」という。

「事前に練って、練って話すタイプです。やはり物事を整理して、優先順位をつけてから学生に話すようにしています」

 その指導の根幹となっているのが「相楽ノート」である。

 コーチ時代から、とにかくノートに練習メニューや自分が感じたことを、書いて、書いて、書きつけていた。

「一冊のノートを書きつくして、次のノートに移る場合も、必要な部分は書き写し、不必要な部分は消しゴムで消していきます。パソコンであればそうした手間は必要ないのかもしれませんが、やっぱり手書きでないと忘れてしまいます。書くことで自分の頭の中で精査されて、必要なものが定着していくのかもしれません」

 この「相楽ノート」は、早稲田の強化のエッセンスが詰まっている一冊でもある。

「箱根のオーダーも、レース展開を予想して、いくつかのパターンがあります、と渡辺さんに提案していました。それがノートにすべて書いてあります」

 相棒である駒野亮太コーチ(2008年5区で区間賞)に、「相楽ノートを見せていただけませんか?」と頼まれ、快く応じたものの、困ったことがあった。

「自分でも判読不能な文字がありまして(笑)。恥ずかしながら、難解なノートになっています。せっかちなので、どんどん思ったことを書いてしまうからだと思います」

 どうやら、今年はコーチ時代よりもノートの冊数は圧倒的に増えそうだ。

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