野球善哉BACK NUMBER
対左の成績が急上昇した理由とは?
筒香嘉智が信じ、貫いた“新打撃”。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2015/07/01 10:40
大器と言われ続けてきた筒香嘉智が、ついに球界を代表するスラッガーに成長した。DeNAに悲願の優勝をもたらすことはできるのだろうか。
体重移動の反動ではなく、軸で打つ。
バッティングにおける取り組みの変化について、筒香はこんな話をしている。
「高校時代のままのバッティングをしていても、プロでも打てないことはなかったと思います。実際、2012年には10本塁打しています。けれどあのままのバッティングやったら、いつか壁にぶち当たっていたと思います。取り組みを変えていなかったから、今の自分はないです」
現在のバッティングを会得するまでの筒香は、日本人プレイヤーの多くがそうであるように、反動を力にしてきた。身体の軸を一度後ろに移動させ、その反動を利用してバットをボールにぶつけていく。コースによって多少捉える位置の違いがあるとはいえ、イメージとしてはミートポイントを前目に置いていた。
筒香は、それをやめた。プロ入り2年目のオフに知人の伝手でアメリカに渡ると、ロサンゼルスのトレーニング施設でそれまでとは違う感覚に出会い、彼はバッティングを変えることを決心したのだ。
「説明するのは難しいんですけど、身体に一本の軸を作るということです。その軸を大事にしたバッティングをすれば、どんなピッチャーにも対応できる。初めてその練習と考え方を教えてもらった時、これはすごいな、と思ってトレーニングから全て変えました。このトレーニングとバッティングを続けていたら、絶対今よりいいバッティングができると思えたんです」
長い時間がかかっても、理想のバッティングを。
ただ、開花にいたる道のりは平坦なものではなかった。
筒香の場合、「ドラフト1位」という看板があり、早く結果を求められていた。本人はたとえ長い時間がかかっても、いいバッティングを求める気持ちが強かったが、世間はそういう目では見てくれなかった。筒香は、自身の想いと周囲の視線のギャップに苦しんできた。
例えばバッティング練習では、常に逆方向を意識してインサイドアウトの軌道を意識する。あるいは、より身体の反動を使わずに力強い打球を打つ方法を身に付けようとしていたが、その取り組みを理解できない人から見ると、スイングが弱く振り遅れているようにしか見えないのだ。