松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
複雑怪奇の難関コースを笑顔で闊歩。
松山英樹、全米OPへ向けて視界よし。
posted2015/06/18 11:30
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph by
AFLO
全米オープン開幕を翌日に控えた水曜日の朝。松山英樹はチェンバーズベイのバック9を回り、試合前の最終調整を行なっていた。
難コースを前にして、さぞかし表情も難しくなっていることだろう。そんなふうに想像してしまいがちだが、米ツアーですでに顔見知りのウェブ・シンプソンらと回る練習ラウンドは、すこぶる和やかなムードだった。
松山自身も、柔和な表情をしていた。少しずつ上達している様子の英語で他選手やキャディたちと言葉を交わし、ときどき白い歯を覗かせる。楽しそうだね。そう声をかけそうになるぐらい、松山の表情は明るかった。
今年の全米オープンが開催されるチェンバーズベイは、2007年開場の新しいコースだ。2010年に全米アマが開かれた以外、ビッグトーナメントの舞台になったことはなく、今大会に出場する大半の選手にとって初めてのコースとなるのだが、実を言うときわめて評判が悪い。
史上初のパー入れ替え制に、ティの位置も日々変わる。
1番と18番は、どちらかがパー4のときは逆のどちらかがパー5となる史上初の「パーの入れ替え制」が採用される。パー70というトータルの数字だけは不変だが、ティグラウンドの位置はどのホールも毎日のように目まぐるしく変わるとされている。とりわけパー3の9番は、小高い丘の上にあるティからなら打ち下ろしの224ヤード、低い位置にあるティからなら打ち上げの217ヤードという具合。それはもはや同一ホールというよりも、まったく異なるホールをプレーするかのごとき別世界になる。
そんな設定の複雑さもさることながら、英国リンクスを思わせるフェスキューのような深いラフは、出すだけでも手首を痛めそうな難敵だ。フェアウェイは複雑に傾斜し、グリーン周りの傾斜はさらに複雑に傾き、花道とグリーンの境界線さえ、遠目からはわからない。
「晴天続きで、すでにグリーンは干上がっていて最悪だ」
「全米オープンを開ける状態ではない」
「USGA(全米ゴルフ協会)は何を考えているんだ?」
そんな悲鳴とも批判とも受け取れる声が選手やキャディたちの間から漏れ聞こえてくる。