ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
米ツアーで「前王者」が受ける歓待。
松山英樹のロッカー、旗、お寿司!?
posted2015/06/15 10:50
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph by
AFLO
1週間前、松山英樹が前年度王者として臨んだメモリアルトーナメント。
1年前のあの日、ミュアフィールドビレッジGCでの歓喜の裏では、ちょっとした“事件”が起こっていた。
優勝後の公式会見が行なわれていた時のことだ。
興奮冷めやらぬ様子で、コースから撤収の準備をしていたサポートチームのスタッフ。選手専用のロッカーの扉を開けると、そこにはあるはずの松山の荷物が消えていた。
まさか、誰かに――。慌てていたスタッフを見つけたのは、コースの従業員。
「ああ、すまなかったね。もう“あっち”に持って行ってしまったんだ」
彼に案内された先は、通常のロッカールームの奥にある別の部屋。メモリアルトーナメントの歴代優勝者が使用する「チャンピオンズ・ロッカールーム」だった。優勝したばかりの松山の荷物は、既にこの部屋のロッカーにしまい込まれていた。
思えば、彼のディフェンディングチャンピオンのストーリーは、この時すでに始まっていたのである。
ニクラウス、ウッズらとともに、松山の名前が。
チャンピオンズ・ロッカールームは、ミュアフィールドビレッジGCのクラブハウスの3階。天窓から柔らかな陽光が降り注ぐ空間には、不思議な温かみがある。
ドアから入ってすぐ左の一角には今年、「2014 HIDEKI MATSUYAMA」と真新しく輝く、金色のプレートが貼られたロッカーがあった。左隣には2013年大会を制したマット・クーチャーの名前、そのさらに隣にタイガー・ウッズ。そして同コースの主であり、大会ホストでもあるジャック・ニクラウスと続いていた。
優勝経験のない選手たちも簡単に出入りが可能だが、この部屋のロッカーはチャンピオンたちへのささやかな敬意である。
「ディフェンディングの大会って、いままでで初めて……いや、(2012年の)三井住友VISA太平洋マスターズだけですからね」
松山はアマチュア時代の2011年に初優勝を飾ってから、その後プロとして日本ツアーで5勝した。しかし年間4勝を挙げた'13年の翌年には戦いの場を米ツアーに移し、日本で大会連覇がかかる試合に出場していない。
今年のメモリアルトーナメントは、前年王者として初めて米国で臨む試合。ただ、本人よりも色めきたっていたのは周囲の方だった。