松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER

複雑怪奇の難関コースを笑顔で闊歩。
松山英樹、全米OPへ向けて視界よし。  

text by

舩越園子

舩越園子Sonoko Funakoshi

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photograph byAFLO

posted2015/06/18 11:30

複雑怪奇の難関コースを笑顔で闊歩。松山英樹、全米OPへ向けて視界よし。 <Number Web> photograph by AFLO

今年の全米オープンが開催されるチェンバーズベイは「史上最難コース」と言われている。トップ10回数やリカバリー率などで米ツアー上位につける松山英樹の安定感が武器になるはずだ。

松山は難コースを、さも楽しそうに笑顔で回っていた。

 だが松山は、そんな複雑怪奇で悪評が先行してしまっているチェンバーズベイを、まるで探検でもするかのように、そしてその探検を楽しもうとしているかのように、両手を大きく振りながらフェアウェイを闊歩していた。

 311ヤードと唯一距離が短いパー4の12番。ドライバーで打った松山のボールはグリーン右手前の深いラフにつかまった。それでもなんとかコントロールをかけ、ほとんど力ずくという感じでボールをラフから出す。打った直後、「こうやって左から右に寄ってくれよ」と願いを込めるように、ボールがピン方向へにじり寄る理想のルートを手で示して見せた。すると、ほぼ松山の仕草通りにボールは左から右へカーブを描きながらピンの方へ寄っていく。ご満悦の笑顔を見せる松山。なるほどと頷く進藤大典キャディ。そんなふうに2人は楽しそうだった。

 未踏の地でこれから迎える4日間を前にして、戦々恐々となる選手もいれば、普段通りの選手もいる。穏やかな笑顔を浮かべながらクラブを振る松山を眺めれば、「ああ、彼は後者だな」と、そう思えた。

試合前日でも「まだ考えてないです」という流儀。

 2週間前、ディフェンディングチャンピオンとして挑んだメモリアル・トーナメントでは、連覇の可能性さえ感じさせるゴルフで5位に食い込んだばかりだ。

 そんな松山が今季2つ目のメジャーに明日から挑もうとしている今、彼の胸の内を聞かんとして待ち受ける日本メディアの間には、ピリピリした緊張感が漂っていた。

 しかし、そこへやってきた松山にカリカリした様子は一切なく、やっぱり普段通りの彼だった。コースの印象を尋ねてみると「長いし、難しいし、グリーン周りもグリーンみたいな感じで、タッチを合わせるのが大変だな」と、どこか他人事のような口調で、緊張感は伝わってこなかった。

 調子は「悪くはないけど、いいとも言えない。ま、フツーな感じ」。どのぐらいのスコアを出せそうか、目指そうか、その予測はつくかと尋ねると、「うーん、どうですかね。わからない。まだ考えてないです」。

 明日から試合が始まるというのに「まだ考えてない」って、一体いつから考えるのだろうかと、ちょっぴりやきもきしてくる。けれど、遅すぎるようにも見えるこのゆったりとしたギアの入れ方こそが、松山らしさであり、彼の流儀であり、強みでもある。

【次ページ】 大風呂敷は広げない、しかし不平不満も口にしない。

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