松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER

「怒らないようにしようと思うっすよ」
全米OP初日、松山英樹の“我慢”。

posted2015/06/19 13:10

 
「怒らないようにしようと思うっすよ」全米OP初日、松山英樹の“我慢”。<Number Web> photograph by Jun Hiraoka

この日は2度もバンカーからの華麗なリカバリーを見せた松山英樹。パットが決まりだせば一気にスコアが伸びそうな気配だが、果たして。

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舩越園子

舩越園子Sonoko Funakoshi

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Jun Hiraoka

 午前8時06分。チェンバーズベイを包む空は、英国リンクスのそれに似た、ちょっぴり物悲しい灰色だった。早朝のせいか、それとも曇天のせいか、スタートホールの10番ティに立った松山英樹が見事にフェアウェイを捉えたというのに、観衆の拍手は決して大きくはなかった。

 だが同じ組で回る2010年の全米オープン覇者で、北アイルランド出身の外国人ながら米国西海岸で絶大なる人気を誇るグレーム・マクダウエルがティショットを打ち放つと、割れるような拍手。米国人の中堅選手、マット・クーチャーが好打を放つと、親愛を込めた「ク~~~!」の声援。

 そんな喧噪をモノともせず、自分のゴルフを淡々と進めていく松山の姿は、全米オープンという特別な空間に身を置いていると言うより、米ツアーで毎週のように目にするいつもの松山そのものだった。

海に目をやり、アムトラックを眺めて笑う。

 スタートホールの10番グリーン。上って下る8メートルのバーディーパットを何の恐れも迷いもない様子でガツンと打ってカップ際へ寄せ、手堅くパー発進。次ホールの11番ですぐさまバーディーを奪ったが、ガッツポーズも何も無く、無表情だった。

 12番、13番と続けざまにバーディーチャンスを逃したが、心を乱されることなく14番はグリーン奥から慎重にパーを拾った。15番では再びバーディーチャンスを逃したが、16番ではピン3メートルに付ける好打を放ち、この日2つ目のバーディー獲得。リーダーボードには早くも「MATSUYAMA」の文字が光り始めた。

 この時点で2位へ浮上し、快走を始めたかに見えた。

 だが当の本人は眼下に広がる海に目をやり、海岸線に沿って走ってきたアムトラックをうれしそうに眺めながらマクダウエルと笑い合っている。その笑顔は、松山の心とゴルフが、いい状態、いい流れにあることを物語っていた。

【次ページ】 最高のバンカーショットと、もったいない3パット。

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