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セリエA、監督たちの“大交代時代”。
ミラン、ナポリは後任も茨の道か。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2015/06/14 10:40
インザーギのセリエA初挑戦は10位に終わった。終盤には選手から名指しで批判されることも。
ミランの次期監督はミハイロビッチが濃厚。
より困難な新天地に挑むのは、サンプドリアを去り、ミラン監督への就任が確実視されるミハイロビッチだろう。
3日、名将アンチェロッティ(前R・マドリー)の招聘に失敗したミランのオーナーであるベルルスコーニは、その日のうちにミハイロビッチを邸宅でのディナーに招き、来季のチーム構想を話し合った。新監督就任の正式発表はもはや秒読みとされている。
ミハイロビッチは一昨年に古巣サンプドリア監督に就任し、降格圏にあったチームを闘う集団に生まれ変わらせた。今季も、凡庸ともいえる戦力ながらミランを上回る7位でリーグ戦を終え、来季のEL予選出場権を勝ち取って監督市場の目玉となっていた。
ミハイロビッチの指導哲学を端的に示したのが、今冬サンプに加わったFWエトーの扱いだった。
フェレーロ新会長の肝煎りで加わった大物FWに若手は委縮し、周囲は機嫌を損ねないよう細心の注意を払った。しかし、加入直後から勝手な理由で練習を拒否したエトーの傲慢さをミハイロビッチは許さなかった。
ロッカールームにエトーを呼びつけると、チーム全員に向かって公に謝罪させ、以降も献身的に練習へ臨まなければ試合で起用しなかった。過去のタイトル歴も名声も、ミハイロビッチには一切関係ない。
ミハイロビッチにしろ、サッリにしろ、試合中の多少のミスには目をつぶる。ただし、彼らが必要としているのは、血ヘドを吐く覚悟で結果を出す選手だけだ。
自らの選手にも、相手にも毅然とした態度で臨む。“闘将”の時代なのだ。
「インザーギにとってミランは“母親”」
ミランを追われたインザーギはしかし、どんなに冷たく扱われようとも、思うような補強がされなくとも、決してミランの経営陣や選手たちを悪く言うことはなかった。まさに盲目ともいえる愛情を注ぎ続けた。
彼が解任された日、ガゼッタ・デッロ・スポルト紙は「インザーギにとってミランは“母親”に等しい存在だからだ」と書いた。
だとすればインザーギには、母親から自立して巣立つ日が来たのだ。