スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
メッシの反逆、SD解任、会長の告発。
バルサはいかに結束を取り戻したか。
posted2015/06/13 10:50
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph by
REUTERS/AFLO
バルサが史上2度目のトリプレッテを実現したベルリンの夜。オリンピアシュタディオンのピッチにて、ルイス・エンリケの体が3度宙を舞った。
選手たちが作る円の中には、不仲と言われ続けてきたメッシの姿もあり、手足をいっぱいに広げて天を仰ぐ指揮官を笑顔で見上げている。
「3タイトルを勝ち獲れるなんて想像したことはなかった。ただ、この選手たちがいれば不可能はない。彼らは何度勝っても飽きることを知らない。タレントと結束力を併せ持った、唯一無二のチームだ」
ほどなくピッチ上で受けたインタビューに対し、ルイス・エンリケは文字通り唯一無二の快挙を成し遂げたチームの強みについてそう語った。
タレントと結束力。彼の言葉通り、今季のバルサの成功を語る上でこの2つは欠かせない要素だった。
メッシの反逆、SDの解任、会長の告発、と難題続き。
遡ること5カ月前、バルサはピッチ内外で深刻な危機に見舞われていた。
1月4日、バルサは苦手とするレアル・ソシエダとのアウェー戦で、2日前にクリスマス休暇から戻ったばかりのメッシとネイマールを揃ってベンチに温存した結果、痛恨の敗戦を喫してしまう。
この試合後、ルイス・エンリケが繰り返す過剰なローテーションに不満を溜めていたメッシが怒りを爆発。ロッカールームで指揮官と激しい口論を交わした上、翌日の練習を無断でサボるという反逆行為まで犯してくれた。
並行して、クラブは未成年選手の登録違反による補強禁止処分の確定を受け、スポーツディレクターのアンドニ・スビサレッタを解任。その傍ら、ジョセップ・マリア・バルトメウ会長はネイマールの獲得オペレーションを巡る裁判で新たに告発され、進退を問われる事態も発生していた。
これだけの問題が同時期に発生する中、以降リーガではレアル・マドリー戦の勝利も含めて18勝2分1敗、CLと国王杯でも強豪を次々に破って三冠を制するに至った原動力。それは追い込まれた状況下でそれぞれが見せた、個人よりチームを優先する連帯意識だった。