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W杯連覇に挑む23人がベストな理由。
なでしこの勝てない相手に勝つ方法。
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byAFLO
posted2015/06/03 11:00
精神的な支柱、という表現をされることが多い澤穂希だが、彼女はプレーヤーとしてもなでしこにとって極めて重要な存在である。
試合の勝敗は、実力とは別のところにある。
――今でもその意識を保っていますか?
「それもギリギリ。W杯の前は『負けて当然』という感じで見られていたし、自分たちの感覚でも“その程度”だったと思います。でもW杯以降は『負けちゃいけない』という追い込まれた状況で3年間やってきて、何とかみんなでそれに耐えてきたという感じはします。だから、やっぱり“次”が大事なんだと思います。真価を問われるのは次の大会ですよね」
DF岩清水梓にも同じ時期に話を聞いたが、彼女も全く同じことを言っていた。
「サッカーってもちろん勝負事だから、相手の実力と自分たちの実力を比較しますよね。でも、結果はそれとは関係ないところにある気がする。そういう意味で、勝負強さはついてきたと思います。W杯で優勝してからは『負けちゃいけない』という環境で戦ってきたので、いい意味でそれに慣れたところもあるかもしれません」
W杯制覇は空前のなでしこブームを巻き起こし、女子サッカー界を大きく変えた。その劇的な変化は彼女たちに「負けてはいけない」というプレッシャーを与え、勝負に対する強さを少しずつ植え付けていった。
だからこそ、彼女たちにとって“あれから4年後”のW杯は「真価を問われる大会」であり、前回王者としてでもFIFAランキング4位の優勝候補としてでもなく、まっさらな状態でもう一度挑むW杯である。
「世代交代に失敗」という理解は楽観的すぎる。
最終メンバーは1カ月前の5月1日に発表され、佐々木則夫監督は200人近い報道陣の前で23選手の名前を読み上げた。1年ぶりの代表復帰を果たした澤穂希を筆頭に、前回大会に出場した選手は17名。
4年という時間を経てほぼ変動のない顔ぶれには「世代交代に失敗した」という厳しい声もある。しかしその指摘は、佐々木監督の言葉に宮間や岩清水の言葉を照らし合わせれば、なでしこジャパンの現状に対してあまりにも“楽観的すぎる”と言える。
「誰がピッチに出ても戦える、最後の最後まで諦めないチームにできるメンバーを選考しました。若い選手も非常に技術が成長し、選考の中でもいろいろ考え至ったところではありますが、いずれにしても厳しい戦いの中で、なでしこらしい戦いができる23名はこれであろうと選考させていただきました」
ピッチで戦うこと。最後まで諦めないこと。それをチーム全体で共有し、“なでしこらしい戦い”を実現すること。それがこの4年間で彼女たちが作り上げてきた勝負強さの源流であり、それを発揮しなければ世界では勝てない。そうした明確な根拠とともに選出された4年前の17名を含む23名は、疑いようもなく現状のベストと言っていい。