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数的不利でビルドアップするバルサ。
GKテア・シュテゲンが可能にする事。
text by
岩本輝雄Teruo Iwamoto
photograph byAFLO
posted2015/05/15 10:40
攻撃局面でも大きな存在感を放つテア・シュテゲンだが、彼ですらクラウディオ・ブラボとポジションを争うという厳しさが、バルセロナのリーガ最少失点を支えている。
キック精度、ポジショニング、視野の全てが完璧。
圧倒的な攻撃力にばかり目が行きがちなバルセロナですが、今季ドイツのボルシアMGから加入したテア・シュテゲンはこの日、ノイアーにも劣らない存在感を見せていました。観戦した席がペナルティエリアの角あたり、前から20列目くらいだったので、両GKの動きをしっかりと見ることができました。
バイエルンのプレッシングを受けるなかでも、テア・シュテゲンのキックはフィールドプレーヤーに劣らない精度を誇っていました。ピッチの横幅を見渡す視野で、空いている選手に鋭いパスを通す場面が何度もありました。ロング、ミドル、ショートパスの精度が高く、状況に応じて蹴り分ける柔軟性も備えていました。
SBやCBがボールを持ったときのポジショニングも完璧でした。ペナルティエリアを存分に使い、スイーパーのような動きをして最終ラインをサポートすることで数的優位を作り出す。パスを受ける前には、必ず逆サイドを視野に入れていました。
例えば、左サイドにボールがあるときは右サイドのダニエウ・アウベス、ラキティッチ、メッシを、右サイドのときはジョルディ・アルバ、イニエスタ、ネイマールへの展開を意識する。と同時に、ピッチ中央のプレッシングが緩いと見るやピケ、マスチェラーノはもちろん、アンカーのブスケッツ、さらには最前線のスアレスにも正確なパスを通していました。
テレビの映像だけではなかなか感じることが難しいと思いますが、実際にスタジアムでそのポジショニングを確認すると、最後尾にテア・シュテゲンがいることでバルセロナのパス回しが完成している、と思えるほどでした。
ボール回しに「普通に」参加するテア・シュテゲン。
もうひとつ、バイエルンのプレッシングへの対処法は、連動性のある美しいものでした。例えば、CBが深い位置まで下りてきて、GKも合わせて数的優位を作っても、普通のGKは慌てて思い切り蹴ってしまう。ところが、テア・シュテゲンは本当に最終ラインの1人という感じでボール回しに参加していました。テア・シュテゲン、ピケ、マスチェラーノ、そしてブスケッツを加えた4人で、慌てることなくボールを回すのです。